§55 狂信者の暴走
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「――あ」
思い出す。この前の電話の内容を。
――兄さん、私学校の修学旅行で海外行ってくるけどお土産何が良い?
――んー、なんでも良いよ。
――相変わらずテキトーだね
――じゃあ外国の風景写真とかオカルトグッズで。
――わかった、良い写真いっぱいとっていくね!
――オカルト無視!?
義妹が、海外にいる。これは、そういうことか。
「――義母さん、大丈夫。大丈夫」
「えっ?」
常時情けない息子。それの珍しく断定する口調に面くらう母。が、ここで説得している暇はない。
「あの子は大丈夫。多分同じように心配した親御さんが電話をかけまくって通じていないだけだから」
「そ、そうかしら……」
「こっちでも調べてみる。何かわかったら連絡するわ」
そう言って、まだ何か言いたそうな義母を無視し携帯電話を切った。
「甘粕さん」
一言呼べば。土下座している彼の身体がビクリ、と震えた。
「簡潔に説明をお願いします」
束の間、逡巡する気配。全てを正直に話すべきか迷うかのように。誤魔化す方が拙いことを理解して腹を括ったのか、大きな息を一つ吐き、言葉が綴られる。
「黎斗さんの――カンピオーネの身内を狙った計画的犯罪です」
「……魔王相手にそんな馬鹿なことをする人がいるワケないじゃないですか。冗談言わないでください」
エルが呆れたように。実際有り得ない。有り得ない、が――
「黎斗さんがカンピオーネであると、信じていない一団が居ます」
日本にいるカンピオーネは草薙護堂だけである。しかし、彼の周囲には外国の結社の影がチラつく。これでは日本の機関は外国に対し後手に立つしかない。ならば、どうするか。
「それでカンピオーネを詐称する者を作り上げる? そんな馬鹿なことするワケないじゃん。無駄だよそんなの」
恵那が一言で斬って捨てる。
「しかし、悟られなければ有効です。黎斗さんは――、権能を使わずに戦果をあげすぎました」
神獣を単騎で、権能を使わずに容易く屠る。権能を使わずに。神獣を斃しても、神殺しであると証明出来ない。なまじっか武術に心得があったばかりに、権能を使ってこなかったことが災いした。カンピオーネが現れた、という報告よりは神獣を単騎で打倒しうる武芸者が現れた、という報告の方を信じたい。どちらにしても有り得ない事ではあるのだが。
「……神獣を権能で倒していれば、ってか」
陸鷹化程の実力者なら、神獣を独力で倒すことが出来る。つまり、彼くらいの実力者と思われているということか。問題はカンピオーネであることを認めさせる後ろ盾だが――
「護堂、ですかね」
「ご明察の通りです。草薙さんとクラスメ
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