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ボロボロの使い魔
『かみあわないもの』
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し離れた場所から見ている影が二つあった
一つは少女

タバサ

ルイズより更に小柄な彼女のクラスメイト
一見、感情の希薄などこか人形めいた印象を受ける彼女は
普段はその印象に違わず読者が好きな大人しい少女である
そんなタバサにとって『決闘』など本来、興味を惹かれるものではなく、親友にでも誘われなけ ればこうして見物などしなかっただろう

だが、タバサの隣に立つ男
この男が興味を引き、自身を誘った
男はタバサが召喚した使い魔
その衣服は全身黒ずくめと言っていい程である
この世界には無い、独特の黒い眼鏡をかける男の表情を伺い知る事は誰も出来ずルーンがそこに 刻まれているかどうかも填められた黒の手袋からは判然としない
平時であれば目立つに違い無い格好も、今はギーシュの、爽快ともいえる逆転劇に興奮し、熱狂 している生徒達が気にする事は無い
だが、今は只『決闘』を眺めているだけのこの男
その正体は『人』では無かった
自在に空を飛翔し、強大な力を持つ亜人

喧騒の外で男は呟く

「相変わらず…愚かな奴だ」

どこか苦い声だった




…だから、やめろっていったのに…

二人の決闘
否、今はただ一方的に殴られ続けているだけの自分の使い魔を眺めながらルイズは 胸中で呟く
勝手にしろとは言ったものの、流石に主として使い魔を放っておく訳にはいかないと考え、暫く 経って『決闘』を見に行く事にしたルイズではあったが、今彼女はそれを後悔していた

…男は不様だった

ギーシュのワルキューレ五体に囲まれ、逃げ出す事も反撃もできず ただただ転がり続けている
倒れては起き上がり、小突かれ転び 起き上がっては、殴られ倒れる
そんな男を嘲笑っていた生徒達の一部が自分に気づく そして所詮は『ゼロの使い魔』だと自分まで一緒にして馬鹿にしてくるのだ
今、彼等がルイズと橘を殊更嘲る理由は先程までの、貴族を圧倒した平民の姿 それを認めたくないが故でもあるのだが
今来たばかりのルイズにそれが理解できる筈もない。

只、わかっているのは使い魔が不甲斐ないせいで自分まで嫌な思いをしていると言うことだけだ
だからあの時自分は言ったのだ
魔法を使えない平民が、貴族に勝てる筈がないのだと

なのにいきなりやってきたあの男はメイドから事情を聞くと、後は任せろ、などと自分の言葉な ど無視して行ってしまった

そして、今はこの体たらくである


一応は自分の使い魔である者が、あのギーシュにいいようにされている
その事自体は腹立たしいが、考え方を変えるならこれはいい機会かもしれないとも思った
今回の事はいい薬になるかもしれない
これに懲りれば、あの自分勝手な平民も貴族に対する礼儀が理解
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