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呉志英雄伝
第十四話〜英傑集結・前〜
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恐怖している。


「例えば城壁から、まぁ高い所ならどこでもいいんだが、足に縄を結び付けてそいつを突き落としたら、これ以上にない恐怖を味わえるんじゃなかろうか、なんてね」

「ひっ」


一瞬にして涙目になる。
どう考えても正気の沙汰ではない。しかし目の前の男ならやりかねない。むしろ嬉々としてやるに違いない。


「それは面白そうだな、是非やってみたいぞ!」

「生憎だが、元譲。お前さんよりも先にやってみたいという娘がいるのだよ」


そう言って劉雲は、視線を荀ケへと向ける。その薄い笑みを浮かべた表情に彼女は心の底から恐怖する。






「そこまでよ」


そんな語らいは君主の言葉で終わりを告げる。
君主である曹操はパンパンと手を鳴らして、この話はここまで、と宣言する。


「桂花をあまりいじめないでちょうだい…」

「いやぁ、すまんね、孟徳。こいつがいじめてくれとせがんでるように思えてねぇ。まぁ本気ではないから許せ、文若」


そう言って軽く笑い、荀ケに向けて謝罪する劉雲。しかしその場に居合わせた全ての将兵ははっきりと聞いた。
曹操に窘められた瞬間、明らかに舌打ちしていたたのを。


「はぁ………」


目と鼻の先とはいえ、官渡まではまだ距離がある。
この先の事を考えると、若き君主は思わずため息をこぼす他なかった。









ところかわって白馬。
正確に言えば白馬に程近い黄河の流れの上なのだが。
約五千の将兵を乗せた船が、ゆっくりと上流にある官渡を目指していた。その軍勢の牙門旗には『劉』一文字が堂々と刻まれている。


「ふわぁ…」


その旗印の持ち主である少女・劉備は、いつ終わるとも知れぬこの行軍に飽きが来たのか、はたまた変わり映えのない景色に嫌気が差したのか、大きな口をあけて欠伸をしていた。


「桃香様!これから戦だというのに緊張感が足りません!」


どこかの陣営でも同じようなやりとりがあった気がするが、それは置いておこう。
主君である劉備を窘めるのは関羽雲長。劉備軍筆頭家臣にして、武将たちの要である。ただその強すぎる忠誠心故、こうした主君の些細な所作にも口を出さずにはいられない。


「ごめんごめん、でもあまりにもすることがないから、ね?」

「それでも兵たちは桃香様を見ているのです。もっと君主らしい立ち振る舞いをしていただかねば」

「そこまでにしておけ、愛紗」


叱責する家臣とその叱責に恐れをなして縮こまる君主という、通常とは逆の構図。
そんな構図を織りなす二人に青髪の乱入者が現れる。


「何だ、星よ。これは言わねばならないことであろう?」


星と呼ばれ
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