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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
Backside of the smile
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た。それまでゲームは携帯ハードのものを数個ほどしか持っていなかったけれど、公式サイトやβテスト時の情報を集めるにつれ、わたしは無限の蒼穹に浮かぶ世界に段々と惹かれていった。そして、正式サービスが始まる二〇二二年十一月六日。早めに宿題を片付けたわたしは、午後三時頃にこの世界へと飛び込んで……そして、囚われた。

 ――『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』。
 自らを茅場晶彦と名乗った巨大な赤ローブの宣言を、わたしはすぐに理解することが出来なかった。チュートリアルと言う名の告知が終了し、正気を取り戻した頃には、既にわたしは夜の闇に街ごと呑み込まれていた。

 デスゲームだなんて嘘だという現実逃避。
 このゲームを作った茅場に対する怒り。
 何故わたしがこんな目に遭わなければならないのかという、自分の運命に対する嘆き。
 かつて味わったことのない、すぐ傍に感じる“死”への恐怖。

 様々な感情が、まるでジャグジーバスの泡みたいに次々と浮かんでは弾けた。その度にわたしは泣き叫び、今にも神経が焼き切れてしまいそうなくらいに頭の中が沸騰した。
 だが、人の感情と言うのは、そんなに長続きするものではなかった。一週間、一ヶ月と部屋に篭っているうちに、徐々にではあるが現実を受け入れられるようになっていった。第一層が攻略されたこと、また、レベルが低くとも《はじまりの街》周辺のフィールドであればある程度安全に狩りを行えることが認知されていったことも大きかっただろう。恐怖や悲嘆、後悔はわたしの中からゆっくりと薄れていき――そして、その影で気付いてしまった。わたしが、今、この世界で、たった一人なのだということを。

 家族もいない。友人もいない。知り合いも、自分を助けてくれる人もいない。現実を理解したことで初めて見えたこの世界は、親元を離れたこともない十五歳の少女(わたし)には広すぎた。何処までも続く広大な砂漠に、たった一人取り残されたような錯覚を覚えた。ぞくりぞくりと背中に這い寄るような孤独から逃げたくて、部屋の隅で毛布に包まって膝を抱えた。怒りや後悔は時間とともに消えていったのに、孤独だけは一向に消えてくれなくて、むしろ日を追うごとに強さを増した。
 やがて耐え切れなくなったわたしは、部屋を飛び出して《はじまりの街》から100メートルも離れていないフィールドで狩りを行おうとしていたパーティーに飛び入りで参加した。とにかく、他の誰かと一緒に何かをしていると言う事実が欲しかったから。一緒にいてさえくれるなら、誰でも良かった。

 フィールドに出てしばらくすると、わたしたちと同じようにレベル1モンスターの《フレンジーボア》と戦っている一つのパーティーを見つけた。恐らくは、目的もレベルもプレイヤーのスキルも、ほぼ同じだっただろう。たった一つ違う
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