暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外10話『トトもの』
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トは?

 言外にそう言いたげなルフィの表情にハントはどうにかこらえて、言う。

「ルフィ、おっちゃんの方向を向け」
「?」

 首を傾げながらもルフィが向きを反転させる。

「掘ってよし! これで不思議穴じゃなくなったぞ!」
「ホントか! おめぇスゲーな! よし穴掘るぞ、ハントも手伝え!」
「任せろ」

 ハントはトトへと親指をグッとたてて、ルフィと同じく素手で穴を掘り始めた。

「……」

 たしかにルフィの掘った砂がトトの穴に入ることはなくなった。しかもルフィもハントもスコップをもっているトトよりも素手で何倍も効率よく穴を掘っている。

 ――……うーむ。

 目の前の二人とはもう二回り以上の年齢が離れている自分では理解できる世界ではないのだろうと、トトは少しだけ考えながら穴掘りを再開するのだった。
 ……ルフィの頭がちょっと残念なだけで、ハントもまたそれと同様だという事実を、トトは知らない。




 さて、それから少しだけ時間が進む。
 ルフィとハントを除いた麦わら一味が泊まっていた宿からの喧噪はいつしか鳴りを潜め、トトよりも数倍の速さで穴を掘り続けていた二つの穴の一方からも音が止んだ。

「……」
「……」

 それに気づいたトトとハントが一斉に顔を見合わせて軽く笑みを浮かべ、一旦作業を中断させた。息を吐きながら腰を砂の地面へとおろす。 

「君は休まなくても大丈夫なのかい?」
「……いや、俺もそろそろ限界かなぁ」

 穴の底で眠ってしまっているルフィを背負ったハントが、トトの問いに欠伸を噛み殺して答えた。ルフィもハントも、トトの穴掘りを手伝い始めたのは良いがやはり慣れない気候と土地にあっては体力が底をつきかけていたらしい。

 特にハントに至ってはそのほとんどを魚人島という水に囲まれた環境で暮らしてきた。ここアラバスタ王国はハントの慣れている環境とは正反対に近く、その分体力の消費も大きいものがある。
 そのハントがルフィと違って穴を掘りながら寝てしまうという状況に陥っていないのは体力の有無云々というよりも、いつでもどこでも寝られるかどうかというその性格の差にあるのだろう。
 ともかく、眠そうなハントへとトトは言う。

「あとは私一人でやっておくから、ルフィ君と一緒に宿で休むといい。明日も大変なんだろう?」

 トトの穏やかな笑みを浮かべながらの言葉に、ハントは答えず、少しだけ難し顔をした。

「……ちょっとだけ聞いてみたいことがあるんだ」
「聞いてみたいこと?」

 この国に起きたことを、ハントはビビから聞いて知っている。
 国では王が住む町以外は雨が降らないという異常気候。
 宮殿に見つかる大量の、周囲の雨を奪うというダンスパウダー。

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