第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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す」
「怖いからか?」
「……それも、ありますね」
「迷惑になると思っているからか?」
「……色々と……はい……理由はあります」
士郎に背を向けたまま、ティファニアは空を見上げていた目を閉じた。
そう……理由は色々とある。
本当に色々。
例えば……そう、予感がするから、とか。
シロウさんと一緒に行けば……何かが変わると……。
それが何かはわからないけど……でも、何故かそう思うたびにアルトの姿が心を過ぎる。
……アルトが時折話してくれるシロウさんとの思い出。
アルトは……色々……本当に……たくさんの事を聞かせてくれた。
悪いところ、良いところ、困ったところ、優しいところ…………本当にいっぱい……いっぱい聞かせてくれた。
シロウさんのことを話しているアルトは、笑ったり、困ったり、怒ったり、むくれていたり……でも……本当に幸せそうに語っていた。
だから、話を聞くたびにわたしは思った。
ああ、本当にアルトはシロウさんのことが好きなんだなって……。
―――好き……なんだなって。
そう……実感するたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。
何で……だろ。
わからない……。
……わからない……けど……もう、いいや。
何時も通り……。
「―――うん……だから―――」
「なあテファ」
「―――え?」
ぐるぐると回る思考を止めたのは、静かに声を掛けてきた士郎の声。
思考の外からの声に、ティファニアはつい後ろを……士郎を見てしまう。
そこには、
「一緒に行こう」
「―――ぁ」
月明かりに浮かび上がるウエストウッドの村を背に、迎え入れるように両手を広げ立つ士郎は、大きな笑みを浮かべながらティファニアに話しかける。
「俺とトリステイン―――いや、世界を見に行こう」
「―――っ」
理由も何も分からない。
ただ、何故か息を飲んでしまう。
瞳に熱が込もる。
鼻の奥がツンっと痛んだ。
視界が、ゆるく揺らめく。
――っあ……いけない。
だめ……駄目よティファニア。
これは―――駄目。
今、口を開けば何か取り返しのつかないことに―――何かが動きだす予感がする。
だから駄目。
―――これ以上彼と一緒にいたら駄目。
理由は分からない。
何が駄目なのかも分からない。
何もかも分からない……なのに……駄目だと感じる。
これ以上彼の近くにいたら……わたしは……。
―――だから。
「……いろ、いろ……理由が、あるって……言ってるじゃないですか」
……なのに。
何で?
「子供たちが……」
「受け入れる用意は出来
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