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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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の……朝までには……」

 頭を俯かせ黄金の髪をベールのように顔の前に垂らしたティファニアは、小さくそれだけ口にすると無言で席を立ち外へと歩いて行った。










 日が沈み暗闇に沈み星が空を満たす頃、ウエストウッドの村と森との境界に一人立つ少女がいた。
 ティファニアである。
 木に背に寄りかかり、枝葉の隙間から覗く二つの月を見上げていた。
 差し込む青白い光りに目を細めながらも、その視界には月の姿を映してはいない。
 ぼんやりとした表情で立ちすくみ、振り注ぐ月光に淡く照らされ朧に浮かび上がるティファニアは、まるで月の精にも……迷子の幼子の様に見えた。
 目を離したすきに消えてしまいそうな……そんな脆く儚げな印象を感じさせ。
 だから、気付けば声を掛けてしまっていた。

「テファ」
「え? あ、シロウさん」

 声を掛けられたティファニアはぼんやりとした目を瞬かせると、声を掛けてきた人物を目にすると小さな笑みを口元に浮かべた。

「どうしたんですかこんな時間に?」
「ん。眠れなくてな。だから眠気が来るまで散歩でもと歩いていたんだ。テファは?」
「わたしも同じようなものです」

 後ろ手に手を組むと、ティファニアはコツンと背にある気に後頭部を軽く当て夜空を見上げた。

「……眠れなくて」
「すまない」
「……何が、ですか?」
「こちらの都合でトリステインに来てくれなど」

 すまなそうに目を伏せた士郎を視界の端に映したティファニアは、木から背を離し二、三歩と足を前に動かした。

「実は昔から外の世界に憧れていたんです。この生活に不満はないけど……時々思うんです。この森の外には一体何があるんだろうって」

 両手を広げ満天の星空を仰ぎ見ながら世界に問いかけるようにそう口にしたティファニアは、顔を下ろすと困ったような笑みを士郎に向けた。

「小さな頃は大きな屋敷の中から出してもらえず、屋敷から出たと思えばずっと森の中……わたしはまだ『世界』を見たことがないんです」
「そう、か」

 目を細め答える士郎の姿に、困ったような笑みを少しだけ濃くしたティファニアは両手を広げぐるりと身体を回した。長い金髪が輪に広がる。月光を受けた髪がキラキラと光り、一瞬地上に三つ目の月が生まれたように見えた。
 士郎に背を向け立ったティファニアは、背に手を組むと星空を見上げる。
 ……窮屈だと言うように。 

「実はですね。シロウさんがルイズたちと一緒に帰ってしまったあの時のことなんですが……アルトに言われたんです。『ついて行くことも出来たのではないのですか』って……でも……わたしは結局ついて行くことはしなかった……」
「子供たちがいるから、か?」
「そうですね。それもありま
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