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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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ズの背中を視線で追うロングビルに、小さな声が応える。 

「……多分違うと思うわ」
「ん? なら何だってんだい?」
「……わからないわよそんなこと……でも……」
「でも?」
「多分……」

 ロングビルの視線に沿うようにルイズの背中を見つめたキュルケは、直ぐにその先へと視線を移した。
 ルイズの向かう先。
 そこには遠目でも分かる広い背中が……。

「シロウに関係してることでしょうね……」










 ………………。

 ルイズは走っていた。

 前へと―――。

 顔を俯かせながら、しかし駆ける足を緩めることなく。

 ―――早く目的地に到着するため……。

 否。

 ……逃げるため。

 誰から?

 何から?

 図星(・・)を突かれたから?

 『怯えている』……?

 そんな筈―――ない……のかな。

 ……ううん。

 多分……そう。

 ……きっとその通り。

 自分の()に渦巻くドロドロとした嫉妬(・・)恐怖(・・)に気付かれるのを恐れて……怯えて……。
 
 だって、仕方がないじゃない。

 あそこには……いるから。

 彼女が―――。

 初めて会った時は気付かなかった。

 ……彼女が、あの騎士だなんて。

 そう―――あれは、時折見る不思議な夢……。

 その夢の中で時折見かける一人の騎士。

 華奢な身体を蒼い甲冑で包み、黄金の剣をもって嵐のような剣戟を魅せるその姿。

 人を超えた域で交わされる剣戟はあまりに激しく疾すぎて、わたしの目ではまともにその姿を捉えることは不可能で。

 でも、霞むその姿からでも分かる華奢な体つきと天に流れる星の輝きのような美しい金の髪から、かの騎士は女性ではないかと思ってはいた。
 
 そう、思っていたけど、初めて会ったあの時、わたしは彼女がそう(・・)ではないかと思うどころか考えもしなかった。

 ……違う……そうじゃない……そういう事じゃない。

 あの時(・・・)のわたしにとって、それは別に気にするようなものじゃなかったから……。

 例えあの時彼女が夢の中の騎士だと気付いたとしても、あの時(・・・)のわたしならそこまで気にすることはなかったと思う。

 ―――だけど、今は違う。

 今のわたしは魔法が使えない。

 ただの能無し(ゼロ)

 シロウは大丈夫だと言ったけど……でも、そんなのただの気休めだと分かっている。

 もしかしたら二度と使えないかもしれない。

 そんなことになったら……わたしはシロウの傍にいられないかもしれない。

 伝説の系統。

 始祖の後継者
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