第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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るその横顔はとても儚く朧に見え。
どうにかしてやりたかった。
だが、何故、彼女がそんな顔をするのかわからなかった。
子供達と一緒にいる時の楽しげな顔は偽物には見えない。
なら、何故彼女はあんな顔をする?
それが、今、わかった気がする。
彼女は―――テファは常に不安なのだ。
ハーフエルフという人ではない自分。
恐れ忌避されてきた過去。
自分は本当にここにいてもいいのか、と。
ここにいればそんな風に考えることは少ないだろう。
子供たちにとってティファニアは唯一頼れる存在であるし、時折帰ってくる姉にとってティファニアは唯一自分の過去と繋がりのある存在だ。
必要と欲せらている。
だが、それが永遠に続かないことをティファニアは知っている。
子供は時が来れば大人になる。
大人になれば、去っていくだろうと。
マチルダも、戻って来なくなるかもしれない。
そうなれば、ティファニアは一人だ。
それはもう……死んているのも同然である。
ティファニアは、きっとそれに気付いている。
だから、ティファニアは外を見る。
もしかしたらここではない何処かに自分がいてもいい場所があるのでは、と。
憧れを、希望を、外へ……世界に見る。
だが、それ以上の恐怖が足を止めてしまう。
過去の記憶。
恐怖の、悪意の、無理解の、拒絶の、暴力の、嫌悪の、憎しみの……過去が、恐怖が足を止めてしまう。
自分を受け入れてくれる世界があるのだろうか? と。
だから、俺ははっきりと口にする。
はっきりと伝える。
大丈夫だと。
受け入れると。
共に行こうと。
そう言った全てを一つにまとめて口にする。
心からの想いを込めて。
その結果はと言うと―――。
―――ああ、やっぱり。女の子は……笑顔が一番似合うな。
「―――はい」
断る事なんか出来るわけが―――ないじゃないですか。
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