第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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ている」
どうしてわたしの口は勝手に動いているの?
「わたし、ハーフですけどエルフですから……バレたら何をされるか……」
「俺が守ってやる」
どうして、『行かない』と言わないの?
「アルビオン王家の血を引いていますから……」
「何か言う奴がいたら黙らせる」
どうして……。
「……ずっとこの村にいたから、常識も何も知らないんですよ」
「教えてやる」
……確認するような言葉を口にするの?
「……そ、その……え、えっと、ほ、他にも―――」
―――ああ、そんなこと決まっている。
「―――テファ」
「―――ッ」
……行けない理由を口にした時点で、つまりわたしは行きたいと言っているのも同然なのだ。
そして……それに気付かない彼ではない。
何時の間にか俯いていたティファニアは、思いがけず傍から聞こえた声に驚き顔を上げる。
仰ぎ見る視界に映るのは、見上げる程に背の高い士郎の姿。天上から振り注ぐ月光に照らされた士郎の顔は、何処か困ったような笑みを浮かべていた。
「もう―――いいんだ」
「……もう……い、い……?」
ぼうっ……と士郎を見上げながら、呆けたように呟くティファニア。
「我慢しなくていい」
「が、まん……なんて……」
「諦めなくてもいい」
「あき、らめる……なんて」
ううん……そう、我慢してた……諦めていた……。
わたしは……違うから。
人間じゃないから。
半分エルフだから。
『外』へ出れば自分だけでなく周りも危険を及ぼしてしまう。
だから……そんなわたしを守ってくれるマチルダ姉さんに、これ以上の迷惑を掛けないように我慢してきた―――諦めていた。
例え誘われたとしても、行けば必ず負担をかけてしまうから……だから―――なのに。
「―――と、言うかだな。俺がティファニアと一緒に行きたいんだ」
―――っあ。
「……どう、して、です、か? どうして、わたしと一緒に行きたい、なんて……」
―――何で、そんな。
「それは勿論」
そんな嬉しそうな、楽しそうな顔で笑って―――。
「俺が、ティファニアと一緒に行きたいからだ」
「―――っ―――ぁ」
ああ、もう、そんなことを言われたら、
彼女が時折ここではない何処かを見ていることには、初めて会った時から気付いていた。
風に吹かれる髪をそのままに、遠く星でもなく山でもなく―――ただ、ここではない何処かを見つめていることに。
子供たちがいる前では決して笑顔を崩さない彼女が、不意に一人になった時に見せ
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