第十一章 追憶の二重奏
第七話 前へと
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からこそ反対はしていない。
原因も分かってはいるのだ……。
―――わたしらの気持ちは無視かい……。
自分たちの預かり知らない場所で決まった事で、自分たちの運命が決められる。
権力者の都合により排除されたと思えば次は呼び出される。
こちらの都合も意思も関係なく。
どうしようもないことであると言うことは分かっている。
別にあのアンリエッタ女王が悪いわけじゃないことも……。
それでも―――どうにもならないのだ。
それが理屈ではなく、感情によるものであるから……。
思ったより根深かったようだね……過去の傷って奴は……。
ティファニアを除き全てを失った過去を思い、内心一人自嘲するロングビルであったが、自分に向けられる苛立ちによる鬱屈が込められた視線に気付くと小さく頭を振った。
大人気なかったね……八つ当たりなんてさ……。
小さく溜め息を吐いたロングビルは、顔を伏せ、垂れた赤い髪の隙間から睨みつけてくるキュルケに頭を下げた。
「すまないね。少し苛々していたからちょっと……」
「……別にいいわよ。……ま、事情が事情だし、ね」
頭を下げるロングビルに軽く手を振って返すと、顔を上げ以前ここに来た記憶を回想するキュルケ。その脳裏には黄金で出来たかのような美しい金の髪を持ち、人ではない証の長い耳を持った人間離れした美しい少女の姿が……。
あの時……アンリエッタからアルビオンにもう一人の虚無の担い手がいるとの話を聞いた時、キュルケは自然とティファニアのことを思い出していた。特に何か確信があった理由ではない。
ただの勘……のようなものであった。
ティファニアが虚無の担い手ではないかと……。
その勘が当たっていたと知ったのは、アルビオンに向かう途中、シルフィードの背の上で士郎の口からである。自分だけでなく、どうやらルイズも感づいていたようであり、士郎からティファニアが虚無の担い手であると聞いても特に慌てた様子はなかった。
ティファニアの色々と難しい立場や状況については、あの時本人の口から聞いたから分かってはいるし、ロングビルとの関係もその時に聞いて大体のところは理解している。ずっと隠し守ってきた存在を、必要だからと表に引っ張り出される。例えそれが保護のためだとはいえ、ロングビルが今回の任務に対し苛立ちを感じてしまうのは仕方がないだろう。
静かに深呼吸し、気持ちを切り替えたキュルケは、小さな笑みを口元に浮かべるとロングビルに向け肩を竦めて見せた。
「あのテファが虚無の担い手ねぇ……アルビオン王家の直系でハーフエルフで更には虚無の担い手……ちょっと詰め込みすぎじゃない?」
「確かにテファは詰め込みすぎだね。色々と……」
「……そう
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