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ボロボロの使い魔
『相互理解』
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わず、あっさりと従い、椅子を用意する
それに腰掛けながらルイズは密かな満足間を得る
橘にしてみれば、自分も早く目の前に並ぶご馳走を食べたいだけであり、逆らう手間も惜しかっ ただけの事ではあるが、ルイズは素直に従う橘の態度を、自分のすごさを理解したからなのだと思った
だが、それで満足するルイズではない
ここからが重要なのだ
主の偉大さを見せつける
そして、今の自分の立場を使い魔であるこの男に自覚させるのだ
予め立ててある予定を、内心で再確認しているルイズを気にする事無く、橘の目は並べられてある料理、その中の一品に集中している。
やがて、耐えきれなくなった彼は一皿手にとり、ルイズの前に出した

両手持ちで、期待に輝く顔で

「なあ!こ「駄目よ!」……」

途端に彼の顔が失望に曇る
だが、ルイズは謝らない
平民の期待に貴族が応えてやる義務はないからだ。

「あんたはそれよ、それを食べなさい」

そして床を指差す
そこには、干からびたパンと見るからに薄いスープ
これが昨晩メイドに言い付け用意させておいた、使い魔の食事である。

「平民の使い魔が、貴族であるご主人様と同じ物を食べられる訳ないじゃない、あんたは床でそ れを食べるのよ」

「…………」

流石に、一瞬橘の顔にも怒りが浮かんだ
怒鳴ってくるかと、ルイズも僅かに身構える
一瞬の緊張

だが、橘は溜め息を一つつくと床に胡座でどっかりと座り、指差さされた物を口に運んでいく
躊躇いなく ガツガツと、ムシャムシャと 唖然とするルイズに構う事なく橘はパンを平らげ、最後に飲み干したスープ皿を床にカタンッ、 と置くと、一言

「…ごっそさん」

やたら剣呑な目で、ルイズを一瞥した後彼は食堂を出て行った

「…………」

驚愕に固まっていたルイズの顔が、次第に紅く染まっていく

「な…、何よ!あんなの本当に食べる事ないじゃないのよ…!」

用意させ、食べろと言っておいてなんだが、ルイズとて本気でそんなものを食べさせようとして いた訳では無いのだ あくまで主としての立場をハッキリさせ、彼に使い魔としての自覚を持たせる事が目的だった
一言、頭を下げて自分に懇願すれば少しはまともな物を出すつもりはあったのだ
少なくとも

彼が手にしていたパスタくらいは

「…何よ全く!ちゃんとお願いすればマシな物用意してあげたのに…!たかがパスタ一つでそん なムキになることないじゃないのよ!」

だが、それも今更である
彼女は、彼が手にしたパスタを食べた
ルイズとしては珍しく、ガツガツと

「…あの、よろしいでしょうかミス・ヴァリエール…」

黒髪のメイドが、おずおずと話し掛けてきたのはルイズが食事をあらかた終えた頃だった

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