『相互理解』
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らけになどならずに済んだのに
昨晩、使い魔の前で倒れるなどという失態を犯した自分をベッドに運び、寝かせた事は評価して やらなくも無い
だが、服を着たまま寝かすなど
この男は一体何を考えているのか
当初、彼に抱いた理知的なイメージは、昨日の事とあわせて既に木っ端微塵になっている。
…補足させて頂けるなら、橘とてルイズの服を脱がす事を考えなかった訳ではない
だが、ルイズは少女なのだ
彼にその嗜好はないが
昨日今日出会ったような中年男に服を脱がされたなど、思春期の少女にとってはどれほど心の傷 になるだろう
その、橘の気づかいは彼の世界であれば当然の常識であるものの、ルイズが持つ貴族の常識はそ れとは違う
今のルイズにとっての橘は、断じて支え合える『パートナー』ではなく
頼りにならない『下僕』でしかないのだ下僕の使い魔に裸を見られた所で何を恥じる事があるだ ろう?
なのに
この男ときたら主の自分が慌ただしく身嗜みを整えるのを手伝う事もせずに床で呑気に眠っている
その寝顔は、やはり『優しそう』であり、召還当初のルイズが惹かれたものと変わりがない、だ が、だからこそ無性に苛立たしい。
「…………」
髪を纏める事を諦め、櫛を置く
昨晩のようにベッドの上に立つ
何度か軽く体を揺らし、ベッドの弾力を確かめる
…これなら、やれる
そして彼女は叫び、飛んだ。
「さっさと起きなさいよ!このバカ犬!」
そして、橘がルイズのドロップキックに悶絶していた頃。
「……う〜ん、どうしたものでしょうかね…」
コルベールは自室で腕を組み、悩んでいた
その原因は机の上に置かれた物にある
一つは絵だった、手のひらに収まる程の、大きさでしかない硬質な紙に、信じられない程の密度で書き込まれている
コルベールは特別、絵画に詳しい訳ではないが、それが尋常ではない一品である事は理解出来る
何せそこに描かれた生き物は、見つめていると動いているかのような錯覚さえさせるのだ
その絵は文字通り、本物を閉じ込めたかのようであり神品と呼べる作品だった
…何故、題材を鍬形虫にしているかは不明だが
そしてもう一つ
隣に置かれているのは箱だった
否、正確には異なる
それは全体的に銀に近い色をしており、絵に比べれば幾らか大きい長方形で、それなりの厚みをもっている
だから、二つを横に並べ机に置いた時、彼はこの絵をしまう入れ物だと思った
だがそれには蓋と呼べる場所が無く、そもそも中は空洞ですらないようなのだ
これが一体何であるのか、コルベールは徹夜して調べたが、結局、理解できなかった
しかし、彼が今悩んでいるのはこの物体の謎では無い。
「これ…どう言って使い魔の彼に返せば いいんでしょうか…」
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