『優しい人』
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そして、理由はもう一つ
コントラクトサーヴァントを行う際に、寝顔を見たルイズが彼の事を『優しそうな人』だと、直 感的に感じた事にある
彼女自身に自覚は無いのだが、その『優しさ』というものは学院に入り『ゼロ』と呼ばれ、馬鹿 にされ続けた彼女が魔法と同じくらい強く求めているものである
そんな彼女が、使い魔という、ある意味特別な絆を持つ相手に、無自覚とはいえ、それを求めようとしたのは無理の無い事であろう
しかし、現実は甘く無かった
「はぁ?異世界?…アンタ頭どうかしてんじゃないの? !」
「…!人をおちょくってるとぶっとばすぞ!!」
一切の余裕も無い顔で、異世界だのあんでっとだのと訳の分からない言葉を続ける男の姿は、ル イズが期待していた『いい人で、優しく、理知的な、頼りがいのある年長者』にはとても見えない
おまけにこの男、いい声をしている割に滑舌が悪く、今のようなテンションで話されると細 かい部分が聞き取れない、こんな頼りになりそうもない男に、自分は何を求めようとしたのだろうか
あまりの情けなさにルイズは思わず泣きたくなる
無論
客観的に判断するならば、非は当然ルイズにあるだろう 例え、誰であろうとも、突然異世界に召還され、使い魔だの、一生の下僕だのと無茶苦茶を言われ平常心で受け入れられる筈も無い
彼女とて、それを理解出来ない程に愚かな訳では無いのだが
『ゼロ』と呼ばれ続けどこか歪み を抱えたまま鍛えられてしまった『貴族としての誇り』は、その事実を認める事を許さなかった
結局の所、使い魔に過剰な期待をしていた自分がどうかしていたのだ
使い魔は召還できた、その一つだけで十分
後は自分が主として、この頼りになりそうもない男を、どうにか立派な使い魔に調教すればそれでいいではないか
そう、結論づける
「おい、 聞いているのか?」
「…煩い!」
黙り込んだ自分に呼びかけた男をルイズは怒鳴りつけた
その、閉じていた時は優しそうだと感じた目が
今、主である自分に鋭い眼光を向けているのが許せない 主としての威厳を出すべく腕を組み、腰掛けていたベッドに仁王立ちで乗っかり
床に胡座をかいていた男を上から見下ろす。
「いい!?アンタは私の…?」
その瞬間、世界がぐらつく
否、ぐらついたのはルイズ自身
何故か?その答えは簡単
彼女はずっと眠たかったのだ
この日に備え、前日の晩も遅くまで勉強していた彼女はベッドに入ってからも期待と不安で殆ど 眠る事が出来なかった
そして使い魔を召還するために何度も何度も爆風に吹っ飛ばされ続け、ようやく呼びだした男と 何時間も怒鳴りあい続けた
時間は既に深夜をとっくに過ぎている
ルイズの思考がいささか短絡的に過ぎた原因の一つに、眠気があった事は間違いなく、
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