暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
58話「幼き日の色」
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か。

「なんかお腹いっぱいになっちゃったー…。アッシュ、ごめーん……」

 だから案の定、頼んだ料理の半分を手伝う破目になっても、やれやれと溜息をつきつつ、この穏やかな日常に静かに笑みをうかべるのだ。

「………フラ、ウ…?」

 今まで黙っていたクオリが、絞り出すように青年の名を呼んだ。その目は信じられないものを目にするかのように見開かれている。
 そういえば、とアシュレイも手羽先を噛み千切りながら頭の片隅で思い出す。このナンパ小僧(意図せずとも1000歳を超えてしまった彼にとっては、相手がエルフだろうと“小僧”同然である)は、ユーゼリアにはちょっかいを出してきた癖に、彼女と同じかそれ以上に目立つであろう同族のクオリには一言も話しかけなかったな、と。

「うん、そうだよ。久しぶり。50年ぶりかな? …クオリ」

 ふわりと浮かんだその笑みは、今までユーゼリアに向けたものとも、武闘大会で浮かべていた笑顔とも異なる、優しく自然なもので。

「フラウ……!! 会いたかった……!!」

 クオリの固まっていた黄金色の瞳から、大粒の涙がこぼれた。

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