黒と緑の攻防
[14/21]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
占ってもらうために三階へと向かう。ふぅ…………全く上り下りしてばかりだから少し辛いな。三階に着き、辺りを見回すとラ二は、昨日と同じ場所から空を見上げていた。
「おはようラニ」
「おはようございます。衛宮さん」
お互いに軽く挨拶をしたので、早速本題に入ろう。
「昨日、言われたとおりきたぞ。今大丈夫か?」
「はい、問題ありません。星々の引き出す因果律、その語りに耳を傾ければ様々なことが分かるものです。ブラックモアのサーヴァント、彼を律した星もまた、今日の空に輝いています」
そう言うと、取り掛かるためか目を閉じたラニは、何かを呟く。その後、昨日渡した遺物を取り出し、手をかざした。すると、ラニの身体が小さく震えだす。
「――これは、森? 深く、暗い……とてもとても、暗い色。時に汚名も負い、暗い闇に潜んだ人生……」
閉じた瞼の裏で、なんらかの景色が流れ始めたのかラニは語り出す。
「緑の衣装で森に溶け込み、影から敵を射続けた姿……」
あの衣装と弓は、まさにアーチャーの生き様が形作られたもの。森に潜み、隠れ続け、卑怯者として闇から敵を撃つ人生。
(似てるな…………)
他人に恨まれ憎まれ罵倒されても、理想を追い続けたその生涯は報われることなく、自分が助けた相手の裏切りによって幕を閉じたあいつとそっくりだ。
『………………なるほど。そういうことか』
アーチャーも何かを感じたのか、自傷的な笑みを浮かべているのを感じる。
「……そう、だからこそ、憧憬が常にあるのかもしれませんね。陽光に照らされた、偽りのない人生に」
隠れ潜む闇として存在したからこそ、光り輝く道に憧れを感じていた。栄光を手にした者こそ英雄の名を冠する。だが、その過程には様々な経緯があるという事だろう。
道化を演じるしかできなかった男、言うなれば、純英霊に憧れた反英霊と言う表現が当てはまるのだろうか。
この聖杯戦争は、まさに見境なしに古今東西から英霊を呼び寄せる代物らしい。ラニの方も、それで全ての景色を、見終わったのかだろう、少し残念そうな声で結果を伝え始める。
「これは、私の探している物ではないようです。今回は、憧憬、それゆえの亀裂。師から教えられた人間の在り方の一つでした。……どうやら、貴方の星もまだ彼とは交わっていないようですので、第二層に向かってはどうでしょう?彼の星をそこに感じてみました。直接問うのもいいかもしれません」
「探し物は残念だったが、こっちは助かったよ。サンキュな」
「いえ、早々に見つかる物とも思ってはいませんので。それではごきげんよう」
これ以上はこの場にいても自分たちの利益は無いだろうし、彼女の邪魔にしかならない。
そう思い、俺たちはラニの言葉に従って
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ