第六章
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「このことは」
「そうだったんですか」
「ああ、というか知らなかったんだな」
「薔薇は見るだけじゃないんですね」
「そうさ、食べられるんだよ」
「それでなんですか」
「はい、実は薔薇がありますと」
それでだというのだ、ラーダが再びセンに話す。
「入れています」
「そうだったんですね」
「ほら、それじゃあな」
若旦那は元の笑顔になってセンに告げた。
「今からな」
「ラーダさんの手作りをですね」
「ああ、食べるんだよ」
このことは急かす様な言葉だった、あえてそう言ってみせた若旦那だった。
「いいな」
「わかりました。それじゃあ」
センは若旦那のその急かす様な言葉に応えてラーダが作った薔薇入りのソーンバーブリーを食べてみた、その味はというと。
砂糖やミルクの甘さ、特にミルクの甘さに加えてだった。薔薇の濃厚なかぐわしい香りも口の中を支配した。その香り自体がだった。
味になっていた、それでセンはこう言った。
「いや、これは」
「美味しいか?」
「とても」
若旦那に対して答える。
「こんな美味しいセーンバーブリーははじめてです」
「というかそんなに美味いんだな」
「はい、薔薇の香りがいいです」
特にだというのだ。
「これが。セーンバーブリー自体もいいですけれど」
「そうなのですね」
「はい、とても美味しいです」
ラーダにも答える、作った本人にも。
「ラーダさん料理上手ですね」
「有り難うございます」
ラーダもセンのその言葉に笑顔で応える、しかし。
ここでだ、ラーダはすぐに切実な顔になってセンに問うた。
「あの」
「はい、何でしょうか」
「お返事ですが」
「そ、それですよね」
その話になるとだ、センも強張った顔になる。そのうえでこう言うのだった。
「告白の返事ですけれど」
「私で宜しいですね」
ラーダは頬を赤らめさせて俯き加減になってセンに問うた。
「私がセンさんの奥さんになって」
「つまりそれは」
「はい、私は是非」
センでというのだ。
「薔薇を有り難うございます、お陰でとても美味しいソーンバーブリーが出来ました」
「じゃあ僕は」
センもラーダの言葉を受けてだ、こう答えた。
「これからラーダさんの為に」
「薔薇をですか」
「薔薇だけじゃないです」
その他のものもだというのだ。
「あげますので、ラーダさんを幸せにします」
「そうして頂けるのですね」
「二人で幸せになりましょう」
これがセンの言葉だった。
「是非」
「はい、それでは」
「さて、これからはな」
どうするかとだ、若旦那は幸せになろうとする二人を見つつ言った。
「結婚式の準備やらで忙しくなるな」
「結婚式ですね」
「そうだよ、俺も協力するからな」
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