第三章
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「あの人か」
「あの人なら知ってるかも知れないな」
「あの人今何処にいるんだ?」
「都じゃないのか」」
即ちだ、北京ではないかというのだ。
「もう流刑が終わってな」
「それでか」
「呼んでみるか?王先生」
「先生が暇だったらいいな」
「そうだな、じゃあな」
こうしてだった、女の首の謎を解いてもらう為に王陽明が武漢まで呼ばれたのだった、王が武漢に着くとだった。
役人達が出迎えようとする、しかし王はその彼等に強い声で言った。
「それはいい」
「いいとは」
「あの、歓迎は」
「それはいい」
そうしただ、高官を迎える様なことはというのだ。
「私はな」
「左様ですか」
「うむ、そうだ」
王は質素な男だ、それでだった。
その足で居酒屋に行く、連れて行くのは長年共にいる供の者一人だけだった。そのうえで居酒屋に来て。
そうしてすぐにだ、店に既に来ていた徐や親父達に問うたのだった。
「この店だな」
「えっ、王先生ですか」
「その通りだ」
まさにそうだとだ、王は徐の問いにすぐに答える。
「私が王守仁、字は陽明は」
「そういえばそのお顔は」
長い髭に厳しい顔、それに長方形の長い独特の冠も見ればだった。伝え聞く王陽明の姿そのままであった。
その彼を見てだ、徐は言うのだった。
「伝え聞く」
「それで穴から女の首が出て来るとのことだが」
実に単刀直入にだ、王は徐に問うた。
「どの穴だ」
「それは私が」
親父は今は畏まって王に応えた、流石に当代きっての大学者であり朝廷でも高官の彼にはそうした態度だ。
「案内させてもらいます」
「店の親父だな」
「左様です」
「そうか、それでどの穴だ」
「この穴です」
親父はすぐに答えてだった、そうして。
その壁の穴を指し示す、そのうえで。
王にだ、こう話すのだった。
「この穴から女の首が出て来るのです」
「すぐに出て来るか」
「実は少し前に出てきまして」
「そうか」
「それでもうそろそろだと思います」
また出て来るというのだ。
「そうなるかと」
「そうか、では待とう」
王は親父の言葉を聞いてそのうえで頷いた、そうしてだった。
その場に立ったまま見た、すると。
すぐにだった、徐達が見た様に女の首が出て来て引っ込んだ。彼はその一部始終を見てそのうえでこう彼等に言った。
「大体わかった」
「えっ、一度御覧になられただけで」
「それだけで、ですか」
「これは悪いものではない」
まずはこう述べるのだった。
「特にな」
「そうですか、やはり」
「これまでも何もなかったな」
「はい、出たり引っ込んだりするだけで」
そうだったとだ、親父も王に答える。
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