第九章
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おぞましい、まさに異形の者の顔になった。心までがそうである存在に。
そのうえで断末魔の声まであげてだった、最後には。
壺の中で顔をひくひくとさせてだった、そのうえで。
こと切れた、すると置かれていた身体は急に干からびて。
顔もそうなった、豊かだった髪の毛はごっそりと抜けて頭も身体もミイラの様になった。その全てを見届けてからだ。
社長はマヤルームに対してだ、小声でこう言った。
「どうやらな」
「死んだんですね」
「ああ、酒の中の塩と松脂が内蔵から滲み込んでな」
「そうしてですね」
「奴は死んだ」
こう言うのだった。
「これでな」
「ミイラになりましたね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「朝まで待つか」
社長はこう言うのだった。
「ここはな」
「朝日が昇ってからですか」
「ああした存在は夜にこそ強いからな」
だからだというのだ。
「日が完全に昇ってな」
「あいつの身体が日を受けてからですか」
「日中は妖怪じゃなかったんだな」
「はい」
それは間違いなかったというのだ。
「それは」
「ならだ、まずはだ」
朝まで待つ、そのうえでだというのだ。
「それからだ、話は」
「わかりました、朝まで」
待つことにしてだった、そうして。
彼等は朝を待った、そのうえでベランダに出てミイラになった吸血鬼を見た、見たところ完全に死んでいた。そしてだった。
マヤルームは化けものの頭を持ってだ、社長に言った。
「まずはどうしましょうか」
「身体を戻るか」
「そうしますか」
「そのうえで上にコーランを置いてな」
ここでもこの書だった。
「塩をこれでもかと入れた柩の中に入れるぞ」
「そうしますか」
「そのうえで火で焼く」
イスラムは土葬だがそうするというのだ。
「わかったな」
「わかりました、そうしますか」
「ああ、ここはな」
こう話してだ、そのうえでだった。
まずは頭と内蔵を身体に戻した、丁度人形の大きいものの首を入れる感じである。そうしてなのであった。
身体を元に戻した、すると。
急にだった、ミイラの身体が元に戻った。
髪の毛もだ、そのうえで目を覚ました顔になってだ、それは夫に顔を向けてこう言って来た。
「あなた、おはよう」
「えっ、御前生きてるのか!?」
「まさか生き返ったのか!?」
マヤルームも社長もだった、最初はこう思い驚いて身構えた、だが。
ここでだ、マヤルームは咄嗟にこう相手に言った。
「おい、朝の礼拝は出来るか」
「今がその時間なのね」
「そうだ、出来るか」
ムスリム、アッラーを信じているなら出来ることだ。だがアッラーに反する存在である悪しき妖怪ならそれをしただけで死んでしまうからだ。だから彼は咄嗟にこう言った
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