第五章
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「やっぱり」
「そうなのですか」
「何か空いていれば」
そうした場所があってもだというのだ。
「そこを埋めてもくれますし」
「そうそう、何かですね」
「それがいいんですよ。実は」
「実は?」
「僕もなんです、最近」
リチャードは満面の笑顔でロバートに話す。
「そうした感じなんです」
「それじゃあ先生も」
「はい、最近付き合ってる人がいまして」
それでだというのだ。
「何か毎日楽しくて仕方がないです」
「ということは幸せなんですね」
「最高に幸せです」
他の誰よりも、という感じでの言葉だった。
「皆に羨ましがられるんじゃないかっていう位に」
「そこまでなんですか」
「二人だからですよね」
こうも言うリチャードだった。
「それは」
「そうですか。じゃあ僕も」
ロバートはここであらためて考える顔になった、自然とその細めの目に思慮の光が宿った。そうして言うのだった。
「二人なら」
「幸せになれますよ」
「そうですよね、わかりました」
リチャードの言葉を聞いて本当にわかった、それでだった。
彼は次の日にだ、ベッキーと会ってバーに行く前に彼女にあるものを差し出した。それは紅の薔薇の花束だった。
その花束を差し出してからだ、こうも言った。
「指輪は後日」
「つまりそれは」
「僕と一緒になって下さい」
満面の笑みでの言葉だった。
「あなたさえよければ」
「そう言って頂けますか」
「駄目でしょうか」
ここでだ、ロバートは断られた場合を考えて覚悟もした。しかしその覚悟は幸いにして、彼にとってはそうなった。
ベッキーはそのロバートにだ、こう言ったのだった。
「では今からバーではなく」
「別の場所ですか」
「私の部屋でお話をしませんか」
「あなたのお部屋で、ですか」
「はい、どうでしょうか」
こうロバートに言うのである。
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