10:店主の鑑
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を背けちゃいけない事もちゃんと分かってるから、頭の中でそれらが衝突しちゃって、そんな風に混乱しちゃう。私の若いの頃にそっくり」
そう言う麗若い女主人は、リズベットへと歩み寄りながら、しっかりと目を合わせた。
「あなたは正しいわ。あなた達の中でも、あなたは誰よりもまっすぐで、誰よりもしっかり者。……だけどね」
面と向かって立ったマーブルに、リズベットもまた真正面から言葉を受け止めている。
「人はそんなに単純じゃないわ。表があれば裏があるように、誰しも二面性があるの。今もどこかに居る死神のように、表顔を隠して内心でも悪事をひた隠している人もいれば……あなた達みたいに表も裏も良い人も居る。あなた達のような人は……悲しいけれど、こんな世界では少ないかもしれない。……だけど忘れないで」
マーブルはリズベットの握り締めた手を取り、それを胸の前へと運び、優しく自分の手で包み込んだ。
「――相手が自分に見せてくれてる、片面だけでも信じてみることも大切だと思うの」
「片面だけでも……信じてみる、こと……」
リズベットの復唱に、マーブルは大きく、ゆっくりと頷いた。
「……それには、さっきの私の告白みたいに、勇気が要ることかもしれない。今のあなたみたいに、思い悩むことがあるかもしれない。でも、まずはね。表面だけでも信じてみるのはどうかしら。あなたが信じてあげれば、きっと相手も心の内を見せてくれる。私はそう思ってるわ」
ここで一瞬だけマーブルが顔を曇らせるのを、俺は見逃さなかった。
「あの子……ユミルも、人の表面すら信じられなくて、自分の心の内を見せてくれないけれど……根はとってもいい子のはずなの。いつかきっと、私達に心の内を話してくれる……――私はユミルを、そう信じてる。リズちゃん……あなたは、どうかしら?」
「…………………………………………」
「…………リズちゃん?」
リズベットは言葉の途中から顔を伏せ、マーブルに問われた時から徐々に小刻みな肩の震えを強めていた。
俺もいよいよ心配になって、声をかける。
「……おいリズ、どうし――」
「――よし決めたッ!!」
問おうとしたほぼ同時に、気合一喝と言った風にリズベットがいきなり顔を上げて叫んだ。俺は思わず耳を塞ぐ。
「あたし、二人をちゃんと犯人の可能性があるって受け入れる! だけどっ! あたしは二人を悪い人って思わない! そう接しない!」
「う、うんっ……」
その眼前に居るマーブルはその声の風圧をモロに浴びており、流石に唖然と、キョトンとしている。
「犯人の可能性を受け入れても、あたしは二人は良い人だって信じてる! 例え、どちらかが犯人だったとしてもっ……あたしは、二人の今見せてくれてる
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