10:店主の鑑
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しても言っておきたかったの。容疑者である私達のことを託せられると思えた、あなた達だったからこそよ。……それともシリカちゃんはさっきのを聞いて、私の事……嫌いになっちゃったかしら」
ぶんぶんと両結びの髪を揺らして否定する。
「よかった……。なら私は、それだけで充分嬉しいわ。それでもシリカちゃんの元気がないのは……あ、コーヒーは苦手だったかしら?」
「い、いいえ、そういう訳じゃっ――あ……」
意外な問いかけに目を丸くして顔を上げたシリカの頭に、マーブルは……
時々、俺が彼女にしてやるように、手を置いて撫でていた。
……俺よりも、ずっと優しい手付きで。
「ふふ、ようやく顔を上げてくれたわね。せっかくの可愛いお顔が台無しよ? そんなシリカちゃんには、お姉さんからの大サービス」
すると、マーブルはトレイに手を運び始め……
湯気を立てるコーヒーの隣に、シューのホイップクリーム添えが置かれた。
「「わぁ……!」」
それを見たシリカだけでなく、アスナまでたちまち歓声を漏らし、不覚にも俺自身も声を喉元まで出しかけた。別に、みんな大好き甘いデザートのサプライズに心底喜んだわけではない。
皿にはコルネでチョコレートデコレーションがされており、そこには……デフォルメされた可愛らしい小竜の絵の隣に、看板と同じ綺麗な筆記体で『ピナ』と書かれたイラストがあったからだ。高い料理スキルと本人の繊細な腕前があってこその芸当だ。
マーブルは俺達のリアクションに深く微笑みながら、ツインテールの髪に再び手を置いた。
「喜んでくれたかしら?」
「そ、それはもう……! ……あのっ、ありがとうございます、マーブルさん。あたし……さっきから必要以上に気落ちしてたかも知れません」
「うん、いい子ね。こんな時でも……やっぱり笑ってなきゃダメよ?」
「は、はいっ……!」
最後にもう一度、にこりと微笑む彼女の髪を撫でながらマーブルは立ち上がり……今度はリズベットへと向いた。
「リズちゃんも。そんな顔をせずに、まずは席に付いたらどうかしら」
「…………マーブルさん。あたしは……あなた達にどう接したらいいのか、どう思ったら良いのか……分かりませんっ……」
リズベットは未だに唇を噛み、手を握り締めて立っていた。大好きな筈のコーヒーの芳香にも、気の効いたシューにも声を上げずに。
「……私とユミルが疑わしいから、かしら」
「違います! その逆でっ……あたしは、あたしも……二人を疑いたくないのにっ……でもっ……」
次第に肩をわなわなと震わせる。だがマーブルは、そんな姿を憐れむ訳でもなく、どこか懐かしむ目で見ていた。
「優しいのね……とっても。でも、疑惑があるっていう事実から目
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