暁 〜小説投稿サイト〜
海の恐怖
第六章

[8]前話 [2]次話
「あの、あれはですね」
「恐竜ですよね」
「どう見ても」
「何でもクロノサウルスとかいうらしいですけれど」
 青年に言われたことも話す。
「あんなのいるなんて」
「そのままUMAですよね」
 客の一人がこう言った。
「あれは」
「はい、誰か写真は」
「いえ、それはとても」
「それどころじゃなかったですから」
 命の危険を感じていたのだ、撮影する余裕は何処にもなかった。
「写真までは」
「とても」
「そうですね、まさかあんなのがいるなんて」
「本当にこれまでなかったんですよね」
 客の一人がカンターロに問うた。
「一度も」
「はい、鮫や鯨は見ますけれど」
「それでもですか」
「見たことがなかったです」
 まさにだ、一度もだと答えるカンターロだった。
「びっくりしました」
「そうですか」
「やっぱりそうですよね」
「噂には聞いていましたが」
 この目で見るとは思わなかったというのだ、だが何はともあれだった。
 陸に戻った、それで彼は客達にこう言った。
「じゃあ今から」
「今から?」
「今からっていいますと」
「はい、バーベキューをしましょう」
 予定通りだ、それを楽しもうというのだ。
「お酒もありますので」
「わかりました、それじゃあ」
「お願いします」
 客達もすっかり大人しくなっていた、まだ驚愕と恐怖が収まらずそれでだった。
 バーベキューを酒と一緒に楽しんだ、その次の日だった。
 カンターロはコインブラの家に行き彼にこのことを話した、その話を聞いてこう言ったコインブラだった。
「おいおい、嘘じゃないよな」
「嘘だと思うか?雇ってる奴もお客さん達も皆見たんだぞ」
「だから嘘じゃないんだな」
「そもそも嘘にしては出来過ぎてるだろ」
「まあな、そもそも御前は嘘を言わないしな」
「見間違いはするだろうがな」
 自分でもそれは否定しない、しかし今は見た人間が一人ではないのだ。
 だからだ、コインブラもこう言うのだった。
「何人も同時に見てだからな」
「ああ、違うさ」
「そうか、本当にいたんだな」
「五十年位前のことだな」
「スキューバダイビングをしていたら恐竜に襲われたってな」
 その噂がだというのだ。
「本当だったんだな」
「そうみたいだな、しかし写真は撮ってないからな」
「携帯とかで動画もな」
「誰もそんな暇なかったよ」
 命懸けだった、それではとてもだった。
「本当にな」
「そうだよな、じゃあこの話はな」
「誰も写真とかじゃ証明出来ないから」
「じゃあ噂にはなるけれどな」
 だがそれでもだというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ