偽りの大徳
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。帝の名の元に全てが手を繋ぎ、より良い世の中を作るために」
優しく言葉を紡ぐと、劉備がほっと息を付いた。まだ何も終わっていないというのに。
「作り出してみなさい。……いつかこの私と相対する事になっても」
笑みと共に最後まで紡ぐと、何かが壊れる音が聴こえた気がした。
目を瞑ったまま、湯飲みを手に取って静かにお茶を飲む。穏やかな暖かさが心地いい。この場には似合わない味だと思いながら、その味をじっくりと楽しんだ。
「そ……それは、どういうことですか?」
深くは言わない。それを言っては私が逆賊になる為に。明確に示すと虫の息の漢に対しても敵対を示す事となる。帝を手中に収めていようとも、それは望ましい事ではない。
「さあ、あなたが考えて出した答えが全てになるでしょうね」
言いながら目を開くと、諸葛亮が少しだけ不安の色を瞳に映していた。
ここからは理想の話では無い。現実的な話をしましょう。あなたは何を選ぶのか、見せて貰いましょうか。
「交渉の話に戻る。関羽から仮の対価の話は聞いているが……こちらから欲しいモノを示しましょう」
何か話し出す前に全てを言わなければならない。劉備の心が揺れている内に決めさせなければ。
関羽は困惑を、劉備は悲壮を、諸葛亮は……歓喜と期待を瞳に浮かべていた。
「同盟、という形は取らないわ。あなた達劉備軍には我が領の通行許可を与えよう。その対価として、徐公明と公孫賛の身柄をこちらに渡して貰おうかしら」
「なっ!」
「それと公孫賛をこの交渉の場に呼ぶのはダメよ。あなたがこの軍を纏めるモノで、その所在を預かるモノなのだからあなた一人で決断しなさい」
短く声を上げたのは関羽だった。
劉備は絶句して何も言えず、私の部下達は静かに聞いていた。無言の信頼は心地いい。私が何を言おうとも、彼女達は私の為を考えてくれているのだと心が暖かくなった。
一人、諸葛亮だけが瞳に知性の光を宿し、口を白羽扇で隠して私を見据えていた。
――きっとそれで隠した口は歪んでいるのでしょう? そしてここからあなたの主が私に言う事も、あなたの読み筋なんでしょう、諸葛亮?
伏したる竜は首を擡げている。しかし羽ばたくには力が足りない。だからその力を得る為に、私を利用したということ。小賢しい、とは思わない。愛おしい敵である仁君、その本物の王佐となってくれた事が今はただ嬉しい。
「どうして……あなたは……さっき一人でも多くの人を救いたいって言ったじゃないですか。なのに……自分達だけで戦って、自分達の国の犠牲を増やすって言うんですか!?」
「ええ、その通りよ。私の国の兵を多く犠牲にして、徐州と徐公明と公孫賛を手に入れるの。それ以下は認めないし、それ以上は望まない。あなた達の力は認
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