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とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第15話 ぶんなぐってやる!
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今なんだよ! 何でだよ!」
「深い理由はない。二日前からの不眠のせいで気分が高揚しているだけだ」
「自覚あんなら寝ろ!」
「どこで。宿舎はあの有り様だ」
「……ああ」
 ウェルドは肩まで伸びたぼさぼさの髪に手を入れ、掻く。
「宿舎片付けなきゃな。面倒くせえ」
「片付け――」
 ノエルが弾かれたように顔を上げる。
「あたし、手伝わなきゃ――」
「よせ。駄目だ。やめろ」
 ウェルドは全力で首を横に振った。
「見ないほうがいい」
 ノエルの目の光が消える。元通りしょんぼりうなだれて座る彼女の姿は、しかし、顔を上げる前よりも、生気がなく見えた。
「あたし、役立たずだ――」
「な――何言いだすんだよ」
「あたし――どんだけ知識があったって――何もできない――」
 がっくり肩を落とし、背中を丸めて、顔を手の中に(うず)めてしまう。その姿はやるせなさの他に、じわりじわりと怒りをもたらした。ウェルドは吐き捨てる。
「狂戦士とかいう奴ら、ひでぇ事しやがるぜ……」
「ちょうどその話を先ほどしていたのです」
 と、クムラン。
「紫の剣について、ウェルドさんはご存知ですか?」
「まあざっくりと。昨夜、ノエルから聞いて」
「紫の剣に憑りつかれて狂戦士化した人間は、己の意志で行動を制御する事が出来ません。聖書の記述の通り、獣のように変化してしまう。殺すしかなかったのです。昨晩までは」
「昨晩?」
「私が狂戦士から紫の剣を引き剥がす方法を見つけたのです。それについて述べるとまた長くなりますから、今は控えます。とにかく、剣を引き剥がすまでの間、バルデスさんがずっと狂戦士を組み敷いて、抑えていてくれたのですよ」
 ウェルドは目を丸く見開いてバルデスを凝視した。
 ノエルの説明によれば、紫の剣に斬られれば、どんな些細な傷であってもいずれ死にいたるという。
「バルデスさん、あんた――」
「見ての通りだ。ぴんぴんしてるよ。かすり傷一つねえ」
 安堵で肩の力が脱ける。
「安心しな、もしお前らが狂戦士化する事があったら俺が取り押さえてやる」
「縁起でもない事言わないでくれよ……じゃあ、その狂戦士は?」
「深く眠りこんでいます。ピクリとも動かず、何も反応しない」
「そいつ……眠りこけてやがんのか? 安全な所で? これだけの事をしておきながら? そいつのせいで一体どれだけの人が傷ついた!?」
「貴様は学者の話を聞いていなかったのか。その男にとっても殺戮は不可抗力だった」
「でもよ! だとしても、何か納得行かねえぜ……くそっ! そいつはどこにいる!?」
「聞いてどうする。行って殴るのか? 殺すのか?」 
 カッと顔が熱くなる。
 ウェルドは反射的に拳を振り上げて、それをディアスの顔に叩きつけようとした。彼は腰帯に挟んでいた石板を
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