暁 〜小説投稿サイト〜
とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第15話 ぶんなぐってやる!
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ぶ)と押し麦のスープ。無発酵パンに青カビのチーズ。少し焦げた塩漬け肉。皿に盛りつけられた食事を平らげて、井戸の蓋から立ち上がった時、同じ蓋に腰掛けるノエルの食事が全く進んでいない事に気付いた。クムランとディアスはまだ、近くの木陰で話をしている。
「食えるか?」
 ウェルドは皿を重ねて座り直す。
「てか、食っといたほうがいいぜ」
「食べられない……」
 蚊の鳴くような声で答え、
「無理」
 フォークで、細切れの、表面がぶすぶすと黒く焦げた、それでいて中は生焼けの肉をつつく。
「だって、ウェルド、町に、道に……人間の……これと同じのがたくさん……」
「あら、元気そうね」
 イヴの声にノエルが驚き、震えた。イヴと一緒にバルデスが立っている。精悍な顔立ちにも、さすがに疲労の色が濃い。イヴはノエルに向けて肩をすくめた。
「無理に食べる事はないと思うわ。食べ足りない人に分ければいいだけだと思うし。ま、『食べられない』なんて言える間が華……なんて事になりそうな気もするけど」
「どういう事だよ?」
「ねえ、おじさん。紫の剣の事、バイレステとアスロイトのエラい人達はどれくらい把握しているのかしら」
「だから俺はまだ二十代だって言ってるだろ」
 バルデスは少し困ったような顔をした。
「そう知られてはいねえ。外側から門を開く鍵を持つ両国の部署の役人と、出入りの商人ぐらいだな」
「そう。だけど例え知っている人間がごく僅かだとしても、商人の世界じゃ噂が広まるのも早いんじゃないかしら? もし開門日に昨夜の件が発生したら、なんてぞっとするわね。そんな恐ろしい場所に誰が好きこのんで商売に来るかしら。少なくともあたしだったら真っ平よ」
「物流を絶たれる恐れは確かにある。開門日の出入りの他にも転送機という手もあるが、動力の関係でそうしょっちゅうは動かせねえからな。ここ最近だとラフメルの葉の件や山羊を仕入れた関係で、あと二ヶ月は動かねえ。でも、本当にモノが来なくなる時は、狂戦士の件とは無関係にそうなるだろうな」
「狂戦士?」
「『紫の剣』に取り込まれた人間の事だ。俺らはそう呼んでいる。とにかく、両国の商人共は逞しいさ。何てったってここじゃ、服も食料も言い値でバカスカ売れる。夢のような市場(しじょう)だ」
「食料の心配はないって考えていいのか?」
「そうとも言い切れないがな。まあ、オイゲンのところに一年分の蓄えがある。いざとなったらそれに手をつけるさ」
「物流が絶たれる恐れってのは?」
 バルデスがウェルドを見る。
「アスロイトとバイレステ両国が壊滅した時さ。この町の門は両国の役人が管理する鍵によって外側から封鎖されている。遺跡で発掘された素材でできた城壁は壊す事も燃やす事も不可能。封印によって乗り越える事も不可能。魔物が外界に流出しない為の処置だ
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