第一部 vs.まもの!
第15話 ぶんなぐってやる!
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み、中を覗いた。
一刀両断された死体が階段下に倒れている。服に見覚えがあり、紫の剣に取り込まれた人間だと思われた。肌が黒ずんでいるのはエレアノールのトラップによる凍傷だろう。
「エレアノールー!」
ウェルドは充満する死臭を吸いこみながら、二階に向けて叫んだ。
「レイアー!」
無音。
「オルフェーゥス!!」
鼓動が早くなってくる。声が上擦る。
「ディアーース!!」
いない。誰もいない。でもそうじゃなくて……もう二度と答えられない姿になっているとしたら……。
「みんな!」
少女の声が呼ぶ。シャルンとアッシュが朝日の中を走ってきた。
「よかったあ、五人とも無事だったんだ! 探したんだよ!」
「シャルン! エレアノール達は!」
「大丈夫! あたし達新人冒険者十四人、全員無事だよ!」
ウェルドは脱力し、顔に気の抜けた笑みが広がるのを自覚した。
「正直、手放しに喜んでもいられないよね。……でも、よかったよ、みんなが無事で、ほんとに……」
「だな。他の連中はどこにいるんだ?」
「こっち。ついて来て」
シャルンはウェルド達を、城壁にあるいくつかの門の内の一つに連れて行った。血生臭さを打ち消すように、食べ物の臭いが近付いてくる。門の前の広場で炊き出しが行われていた。炊事の煙の中を人々が行き交っている。
「オイゲンさんやサラが朝ご飯を用意してくれてるんだ。食べて……そんな気分じゃなくても、食べといたほうがいいよ」
「ああ……」
と、門の近くの木の下に、ディアスの姿を見つけた。クムランと一緒に何か話しこんでいる。
心底から安堵した。同時に、自覚する以上に彼の身を案じていた自分に気付いた。
喜びよりも、怒りと苛立ちが沸きあがる。ウェルドは声を荒らげた。
「おい、そこの陰険野郎!」
すると人混みの中でディアスだけが顔を上げ、大股で歩み寄るウェルドに一言
「何だ」
「……」
ウェルドは少し反応に困った。
「何だ。早く用件を言え」
「……いや、その、お前、なに? こんなに人がたくさんいる中で『そこの陰険野郎』って聞こえたら『俺の事だ』って思っちゃうわけ?」
「俺の他に誰がいる」
「自分で言うのか!」
彼は、顔も服も煤で汚れているが、それはウェルドも同じだ。無傷でぴんぴんしている。
「まあ、いいじゃないですか」
クムランが笑顔で宥めた。
「こうして無事再会叶った事ですし、今は喜びましょう。あなた達も朝食をとるといいでしょう。明け方からずっとサラさんが手伝ってくれたのですよ」
ウェルドは二度頷き、そうですね、と応じた。パスカ達と共に配給の列に並ぶが、ディアスはついて来ない。クムランと小声で話し合っている。二人とも深刻な顔で、何を話しているかは聞こえなかった。
※
蕪(か
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