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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の1:策謀の実行
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ト仕事で此処に居ル・・・が、もう付き合うノモ止めにする気ダ」
「どうして、とは聞かんぞ。答えなど明白だからな」

 すっと瞳を窄めてユミルは眼前の男を見据える。胸の内で押さえ込まれていた燻りが、此処にきて一気に沸騰してくるのを感じた。

「俺が此処に居る理由を理解しているな?」
「・・・分かるサ」
「なら問わせてもらおう!あの時お前は何処に居たっ?十年前っ、夜のタイグース樹林でっ、お前は一体何処で何をしていたんだ!・・・あの時お前が居れば・・・俺はとっくにっ・・・!!」

 強きの言動に思いを滲ませながらユミルは叫ぶ。想起する記憶の数々が、心の荒波を更に逆立てるようであった。

「応えろ、ビーラ!この拳は直ぐに飛ぶぞ!!」
「・・・・・・ユミル、アノ時はーーー」

 その時、木目が裂ける様なばきばきとした不穏な音が、ビーラの背後から走る。その瞬間にビーラは目を見開き、咄嗟にその方向へ向けて疾走する。

「っっ、ビーラっ!!!!」

 それが逃亡に見えたユミルは怒りを更に湧かせて追従する。通りの人混みに消えたビーラの背中を追おうと走駆を早めようとした時、頭上より再びその不穏な音が響き、ユミルは思わず上を仰ぎ見た。
 先に通りがかったバルコニーの底が奇妙に近くに見え、それが瞬きの間に一気に近付いた。 
 
『離れろっっっ!!!!』

 破裂するかのような叫びに遅れる事無く、地を震わすような轟きが空間を埋め尽くし、人々のどよめきを誘った。人々の衆目を集める中でバルコニーが破砕した姿で現れ、そして何を見たのか、群衆の間から悲鳴が走り始めた。  
 和気藹々としていた通りに生まれた狂騒は、其処から俄かに離れた場所に位置する教会の方にも直ぐに見て取れた。昼食の満腹感を覚えていた慧卓は驚きで目を見開く。

「な、なんだ?」
「どうしたんです!何が起きたのです!?」

 彼らの問いに答えるように、騒ぎの方向から慌てて憲兵が駆け寄ってきた。彼は驚愕と焦燥を貼り付けた顔で報告する。

「も、申し上げます!!麦酒の屋台を出していた木造家屋の二階バルコニーが、その、丸ごと外れてしまったようで・・・」
「はい!?欠陥住宅過ぎるでしょう!!あの家、もしかして老朽化とかしてました!?」
「い、いいえ、あの家はつい三年前建てられたばかりの新築の家屋ですっ。老朽化などありえません!目撃者によれば、いきなりガタンと落ちてしまったようでしてっ」
「じゃぁ支柱が腐っていたとか!?害虫とかに食われていたとか、誰かが柱を削ったとかーーー」
「ミルカ、もういい!!憲兵!!」
『はっっ!!』
「現場に急行して、事故の負傷者の捜索と手当てを最優先に行うんだ!医術や回復魔法に心得のある奴が居たら誰でもいい、現場に急行させろ!!それと野次
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