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王道を走れば:幻想にて
第三章、その3の3:三者の計画
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とハボック大隊長に加えて、三十年前の戦争における英雄、クマミ殿もまた叙任式にて栄誉を授かる予定となっている。公私と貧富を問わず、臣民にとって非常に喜ばしい事だ。・・・君については・・・一部は喜ぶだろう」
「一部であっても俺には充分過ぎます。俺を受け入れてくれる方々が居るって事ですから。これ以上の喜びはありません」
「・・・まぁそういう訳で宮廷は大忙しだ。以前お前が発案した『ロプスマ』での祭事を参考にして計画を立案している所だ。だが問題はこれだけではない。・・・ミルカ、例のものを」
「・・・どうぞ」

 ミルカはかつかつと靴を鳴らして歩いて慧卓にやや厚めの書類を渡す。ちらりと、ミルカが慧卓を窺った。

「ふっ・・・」
「は?」

 嘲るような鼻笑いを零してミルカは元の位置に戻っていく。何を馬鹿にされたかは知らないが、偉く挑発的な態度である。執政長官の咎めの視線をミルカは受けるも、それをすらりと受け流して悦に入った面を零していた。
 レイモンドは何も言わずに慧卓へ視線を戻す。慧卓は書類に目を通して、そして悩んだ。

「・・・すみません。この世界の文字は一応勉強しているんですけど、細かい単語の変化や専門的な知識を伴った言葉はまだ分からないんです。宜しければ、中身を説明していただけますか?」
「成る程な、では説明しよう。祭りが行われるのは七日後であるが、正に同じ日に、神言教の教会では『拝礼の儀』が執り行われる。信者達が跪き、主神に対して信奉の言葉を捧げる儀だ。これに際して数多くの儀礼用の道具や、古くから伝わる遺物が運び込まれている。
 ・・・常は教会に好意的な立場の文官を派遣して作業を手伝うのだが、今回ばかりはそれも適わん。よって、遺憾ながらも一般の兵士達を動員してそれを手伝わせる予定だ。ケイタク殿、貴方にも手伝って戴きたい」
「あ、あの、手伝うってどんな事を?」
「なに簡単だ。物品がちゃんと運び込まれて来たかチェックするだけでいい。場所は聖鐘の裏手にある二階建ての建物だ。今渡したものの、二項以降にそのリストが書いてある」
「だから俺読めないって・・・ってか拒否権とかーーー」
「ああ、それ無理ですから」

 抗議の言葉を遮るミルカ。にやにやとした笑みで彼は続ける。

「だって私がもう話を教会側に伝えてありますし。教会の警護任務もついでに受けておきましたから、二人で頑張りましょうね」
「こいつ腹立ちますねっ・・・!体毛を一本一本油で燃やしてやりましょうか?」
「やめんか、二人とも。当日は職務上顔を合わせる身なのだぞ、少しは仲良くせい」
『チッ・・・チッ・・・チッチッ・・・チッ!チッ!』
「舌打ちで戦争をするな」

 指で作った皿に顎を沈めてレイモンドは呆れ顔で若人二人の喧嘩を見詰めた。舌を鳴らす鍔迫り合いを止め
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