暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第三章、その3の3:三者の計画
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
・・・紅茶が四杯、アップルパイ七皿、チェリーパイ六皿。占めて170モルガンに御座います」
「・・・・・・」

 普通の相場ならば、紅茶が2モルガン、アップルパイが5モルガン、チェリーパイが7モルガンだ。詰まり、全部が二倍。皮の財布に在るのはたったの銀貨10枚、100モルガンである。

「あの野郎共・・・」
「?」

 値段を爆上げさせた友人二人に対する憎しみが沸いて来た。可愛らしく頸を傾げる店員の耳に、店外からの二度目の黄色い悲鳴が飛び込んでくる。
 瞬間、慧卓は情けなさに歪みつつもはっとした表情を見せた。此処は恥を忍んで頼まなければならない。さもなくば賠償が皿洗いだけで済む筈が無いのだ。

「ちょ、ちょっと待ってて。もう一個財布持ってくるから」

 そういうなり慧卓は人質の財布をテーブルに置いて、店外に居るアリッサの元へと向かう。殺気の混じった乙女の視線を末恐ろしく想像しながらも、慧卓は店のドアを開いた。







「まぁそう硬くなるでない。楽にしてくれ」
「は、はい」
「・・・」

 寒くなった懐と、冷たい視線に竦んだ心を伴って、慧卓は王都の宮廷に設けられた執政長官の厳格な執務室に入っていた。カーテンがぴしゃりと閉ざされており、陰影定かならぬ面持ちをしてレイモンドが見詰めてくる。それ自体にも中々の威圧感があるのだが、彼の隣に佇む金髪碧眼の美少年の睨みもまた威圧的であった。本人がそう望むまいと、慧卓から見ればそれは主人の気を惹こうと格好をつけるかのような態度である。 

(なんか犬っぽい子供だなぁ)
「君を此処に呼んだのには実は訳がある。というより、理由失くして呼んだりはせん」
「はぁ・・・結構大事な用事だったりします、それ?叙任式に関係があるとか」
「・・・少し違うな」
「あれま」

 レイモンドは横広のマホガニー製の机に肘を突いて指を組み、その上に顎を乗せた。億劫気味な口調で彼は始める。  

「確かに叙任式を八日後に控えているし、準備もとんとん拍子で進んでいる。問題は無い。だがな、国王陛下の気紛れが出てな、それよりも早くに王都に祭りを開きたいと仰せになられたのだ」
「はぁー・・・。邪推するに、そのお祭りは誰かの栄誉を祝ってのものでしょうか?・・・例えば異界の人間とか」
「自惚れも程ほどにしたら如何です?私達から見れば、貴方の価値なんて塵のようなものなんですよ」
「これ、ミルカ」

 窘めに口を尖らせる少年。ミルカというこの少年はいたく慧卓の事を嫌っているらしい。何ら接触も関係も無い内に強い反感を受けた慧卓は、困ったように口角を横に広げた。
 レイモンドは慧卓の言葉に乗って続ける。

「仮にそうであっても、臣民が喜ぶのはお前ではなく、クマミの方だろう。騎士アリッサ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ