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王道を走れば:幻想にて
第三章、その3の3:三者の計画
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でもどうか私の気持ちをお受け取りになって下されば、私はそれだけで・・・」
「あ、ああ、勿論だ。貴女の厚意は確りと受け取ったぞ」
「きゃあああ!!皆聞いた!?好意ですって、好意!!私の恋心が遂にお姉様に届いたわ!!」
『きゃああああ!!』
 
 蝉の合唱よりもウン十倍高々しい悲鳴であり、慧卓とミシェルは何も言わずに窓を閉める。助けを請うようなアリッサの瞳を垣間見たが、正直助けにいける気がしなかった。
 パックはアップルパイを胃に流し込み、新たに注文したと見られるチェリーパイ、薔薇の花を散りばめたような綺麗なパイである、を頬張りながら言う。

「ありえねぇ光景だな・・・がつがつ・・・ごくっ。ミシェルの姉貴の方がウン十倍天使だ」
「マシじゃねぇよ、あんなの。アリッサさんが天使なら、うちの姉貴は独房の処刑人だよ。あれに容赦とか情状酌量とか求めた瞬間、紳士の領域が物理的に炎上するんだぜ。言葉攻めじゃなくて物理攻めですよ」
「なにその物理的な悲哀」
「悲哀じゃねぇよ、悲劇だよ!!!」

 瞠目して言う台詞には隠しようのない悲哀が篭っている。ミシェルは心からの思いを込めて慧卓に告げる。

「という訳で、まともな姉というのはな、ケイタク。略奪的な人間じゃないし、同性をやけに惹き付けるような女でもない。ちょっと怖いくらいが丁度良い、美人な女性が一番だ」
「最後願望入ってるじゃん」
「姉御が此処に居ないから良いんだよ。あれが居ない間でなきゃ本音が語れないっつぅの」

 ハハハと乾いた笑みを漏らしながら紅茶を啜るミシェル。それを嚥下した途端、身体をびくりと震わせ、一瞬にして表情が恐慌に陥る。

「・・・どうした、ミシェル」
「な、なんか寒気がする・・・。ちょっとヤバイ気がするから家に帰るわ!これ御代な!!」
「あっ、おい、ミシェル!!ったく、ケイタク、一応俺も後を追うから御代払っといて!」
「あっ、ちょっとお前らっ!」

 ばたばたと店から駆け出していく二人。慧卓の声は彼等に届いたが、鬼気迫るかのような勢いのミシェルによって蝿の如く叩き落されたようだ。彼をそう至らせる鬼姉とはどのような存在なのか。会ってみたくない。

「ったく・・・なんなんだよ、あいつら」

 それでも気持ちがすっきりとしないのは変わりない。慧卓は紅茶の残りをぐいっと飲み干した。最後の温さに至るまで上品な味わいを損なわない一品であった。実に満足である。ツインテールのウェイトレスもまた可憐なのが二重の意味で満足である。

「失礼します。こちら、御会計という事で宜しいでしょうか」
「あ、はい。全部でお幾らでしょうか」

 慧卓はそういって外套の内から皮袋のような財布を取り出した。中身は全て銀貨であり、支払いは容易に済まされるだろう。

「えっと
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