第三章、その3の1:遠因の発生
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浅はかで軽率な言葉であったろうか。嘗て宮中で責務の深き政務の傍らで美しき詩を吟じていた頃の自分に比較すると、堕ちる所まで堕ちてしまったものだと思えてくる。昼間から酒瓶の束を担ぎ込み、その麻薬のような豊潤な味わいにのめり込んでしまっていると思うと。
そして心配が重なる。最後の言葉にミントは随分と気を害してしまった。その時の歪みが怒りのためではなく、寧ろ覆せぬ図星を差された時特有の引き攣りに見えてしまったのだ。ミントは深く家族思いの気質である。言葉に対して、何か発作的に要らぬ方角へ足を踏み入れてしまうのかもしれなかった。
(・・・・・・だが、今更どうする事も出来ないのだ)
寝台に己を埋めるミラー。酒気が篭った息は震えている。きつく閉ざされた瞼からは涙が一つ、そして二つと毀れて皺が寄せられた顔から、温かみのある布団へと伝っていく。今はどうにもこの布団の中に埋もれてしまいたい気分であった。
震える息を隠すようにミラーは寝具に身を落ち着ける。西日が空を赤く染める頃には、彼の口元からは静かな寝息が毀れていた。
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