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王道を走れば:幻想にて
第三章、その2:西日に染まる
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な晴れやかな笑いを見せる男。抓られて赤くなった耳が高笑いと共に、くいくいと上下した。髭をくいと整えながら、男は別れの挙手を掲げた。

「さて異界の若人よ!王都を充分に満喫したまえ!時間は常に消費され、有意義に消え去るのを求めているのだ!それに相応しき行動を、スピーディーに行い給え!!さらばだ!!」
「あ、ちょーーー」

 男はそういうなり背をくるりと向けて脱兎の如く走り去った。慧卓はその余りの身のこなしの素早さに呆気に取られ、手の中に残るアミュレットをぼんやりと見詰める。 
 
「行っちゃったよ・・・ってかなんですかこれ。何処で付ろと?古墳?」

 西に傾きつつある日光を反射するアミュレットは、実にきらきらと絢爛で妖美な光を湛え、慧卓の黒眼の中に浮かんでいる。
 熊美は腹立たしい思いをぶつけられぬ不満を吐き出して、慧卓に声を掛けた。

「・・・やっぱり荷物重いでしょう?少し持ちましょうか?」
「いいえ、これは男の責務ですから!」
「私も元男なんだけど・・・」

 


 日は既に随分と西に傾いている。紅に染まる天に混じって金色の稜線がどこかも知れぬ彼方の空へと走っていた。まるで豪奢な扇を広げたかのような光景は人々の息を飲ませ、そして感嘆の息を漏らすに相応しきものであった。
 だが全ての人間がこれを見れるとは限らない。慧卓と熊美もその例に漏れず、壁に囲まれて何処までも続く、暗い螺旋の石段を登っていた。

「結局、全部見回れませんでしたね。王都って広いや」
「というより、あのスターリンのせいで疲れたのが一因でしょうね」
「ああ、それは分かります。なんか無駄に気力が無くなったっていうか・・・」
「そんな貴方を、コミンテルンは優しく応援します」
「呪われそう」

 冗談を交し合う慧卓と熊美の二人。あれからまた買い物袋が一つ増え、慧卓の手にはそれぞれ二つの袋がぶら下がっていた。肩がびんと張る痛みを飲み込んで、慧卓は男の矜持を張って階段を登っていた。
 そんな彼を先導するのは、真っ白な司祭服に黄色のストールを掛ける青年であった。風鈴が鳴っているのかと思うくらい涼しげで純朴な笑みを浮かべている。

「御二方、余程大変な目に遭われた御様子で。お察し致します」
「ああ、その涼しげな表情が羨ましい・・・」
「妬むのは止めなさい、女々しいから」
「女々しいって・・・男でもっ、女でもない人がm分かるんですか?」
「元、男だからね」

 話す内に慧卓の息は荒さを増していく。どんどんと続く石段は確かに終わりこそあるが、その頂点に達するまでが実に困難である。 

「この階段、何時までっ、続くんでしょうか?」
「もう直です。しかし御二人はとても幸運でいらっしゃる。この王都、夏になると西日が非常に鮮やかになる日が
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