第五十二話 思春期E
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い。その行動が相手にとって、気分を悪くさせるようなことなら理性で止めてしまうのだ。
一方エイカは、考えるよりも先に行動に移してしまうタイプである。面倒だと思ったら、すぐにやめようとするし、からかわれたら、猫のように毛を逆立てる。それで後悔することはあれど、彼女は細かいことはあまり気にしない。相手を気遣って難しく考えるよりも、自分の考えで突き進む道を選ぶ。アルヴィン並みに、エイカの神経も図太かった。
「……で、今度はどんなアホなことを始めたんだ」
「エイカさんが容赦ないです。その、えーと、え、笑顔の練習?」
「疑問形で聞かれて、俺がわかるか」
「自分で聞いといて、バッサリ切りやがった」
知り合いとのいきなりのエンカウントに、アルヴィンは脳内でパニックになりながらも、言葉はポンポンと出てきた。習慣とは恐ろしい。会話を交わしながら、少しずつ冷静さを取り戻していったアルヴィンは、いかにエイカと自然に別れるかを考える。彼女を巻き込む訳には、いかないと思ったからだ。
いつも通りの会話の応酬をしながら、考え事をしていたのはアルヴィンだけではなかった。エイカもまた、話している内に違和感を感じとる。エイカは基本、アルヴィンに遠慮や容赦をすることはない。その理由に関しては、アルヴィンの完全な自業自得が主だが、最初の邂逅が大きな要因だろう。
彼と出会ったことで、何もかもが変わった。2年前のあの時が、エイカにとってターニングポイントだったのは疑いようがないことだった。盗みをし、1人で生き、時に誰かを傷つけていた世界。そんな世界が、たった1人との出会いで崩れた。人と関わり、仕事をして、友達ができて、笑って―――考えたこともなかった世界が今、彼女にはあった。
アルヴィンは唯一、あちらの世界にいたエイカと今のエイカを知っている人間なのだ。堂々と真正面から遠慮なく世界をぶっ壊してきた人間に、何故こちらが遠慮しなくてはならない。今の自分に不満はなくても、そんな思いがエイカにはあった。
あの時のように、こいつなら笑って受け止めてくれるはず―――そんな無意識な期待も、含まれていたのかもしれない。
「……何かあったのか」
「ん、あぁ。ちょっとな。でも、大丈夫大丈夫。エイカには関わりがないことだよ」
「…………」
違和感がまた、エイカの中に芽生える。やんわりとしているが、明らかに今拒絶された。本当にいつも通りなら、彼はもっと言葉を選ぶ。普段のアルヴィンなら、「エ、エイカさんが俺を心配してくれるなんて……!」とわざと大げさにリアクションをして、怒らせていたことだろう。
アルヴィンが困っていても、エイカは基本的に手を貸さない。理数がわかんねー! と発狂していようが、無視して隣で黙々と問題を解く。妹の脱ぎ癖に悩んでい
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