第五十二話 思春期E
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。そうすれば、誰にも責められる理由なんてない。
謝ったって、相手も困るだろう。転生のことを話さなければ、相手の方が申し訳なく感じるし、混乱だってするはずだ。それこそ、もし転生のことなんて話したら、……軽蔑されるかもしれない。だいたいそのことを話して、誰が幸せになるというのか。
「うわぁ、最悪な思考回路だ。完全に鬱っているよ、俺」
アルヴィン自身は笑ったつもりだったが、笑えていたかどうか、本人はわからなかった。いくら考えたって、どうしようもないことなのはわかっている。もう自分はここにいて、特別をもらって生きているのだから。今更返すことなんてできない。
もらった力があったから、今の自分がいる。転移がなければ、アリシアを助けられなかった。魔法がなければ、闇の書に立ち向かうことができなかった。今の記憶を持ったまま、過去に戻っても、アルヴィンは力を持つことを望んだだろう。
だったらこれから先、使わない様にすればいいのか。そんなことを思って、首を静かに横へ振る。そんなことは、おそらくできないだろう。何よりも、アリシアが気に病むに決まっている。そんな選択を選ぶぐらいなら、テスタロッサ家から出ていくことが一番簡単だろう。少しずつ疎遠になるように距離を図っていけば、これ以上アリシアを傷つけることはないかもしれない。
「ははっ…」
アルヴィンは乾いた声をあげ、ガシガシと頭を掻いた。……本当に、どうしようもないことを考えてしまっている。それを自覚し、心底バカだとも思っている。それでも、他に考えられなくて。
プレシアたちに無理を言って、1人にさせてもらったのに何も解決しない。色々整理をしたいから、と出てきたアルヴィンは、虚空を眺める。歩き出して、まだ10分ぐらいだろうか。1人でいるリミットは、おそらく1時間が限界だろう。
こんな風に自暴自棄になって、鬱っているよりも、まずはアリシアを元気づけなければならないのに。彼女を安心させてあげることが、最も大切なことだ。自分が怒っていないこと、傷ついてなんていないこと、彼女は何も悪くないのだと伝えなくてはならない。
……そのためなら、ちゃんと笑顔を作れる。
見慣れた街並みの一角。アルヴィンは、商店街のショーウィンドウのガラスに映る、自身に目を向ける。母と同じ色を持った、少年の姿が目に入った。そのまま口元に笑みを作ろうとするが、引きづったようになったため、両手で無理やり横に伸ばす。眉を指で上下にいじるが、なかなか山のようなカーブの形にならない。
そこまで無心でやっていたアルヴィンだが、ふと思いつく。面白いことを考えたら、笑い方だって普通に思い出すんじゃないか、と。とある副官さんの数々のリアクションを頭に巡らせ、とある先輩の学校改革の仕方にツッコん
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