第五十二話 思春期E
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が少ない方へ向かって走っていたため、ここにたどり着いてしまったのだろう。
そんなこの場所に、コーラルは見覚えがあった。プレシアたちの開発局は、開発特区と呼ばれる別の場所にあるため、ここではない。管理局の施設もここらへんにはないはずだ。それなのに、何回かここに訪れたことがある。
改めて地図を確認し、コーラルはようやく思い至った。そして、少しばかり思考に耽る。そうだ、今回の喧嘩は彼にも関わりがあることですよね、と。無言になったコーラルに、ウィンクルムは不思議そうに上空を見上げた。
『どうしたの、コーラル?』
『いえ、ただこのあたりに協力してくれそうな方の心当たりがありまして。その方に、メッセージを送ろうかと』
『えっ…。でも、巻き込んじゃっていいの?』
他人を巻き込んでしまう申し訳なさと、余計に事態が悪化してしまわないか、とウィンクルムの瞳が揺れる。コーラルも彼女の不安がわかるため、本来ならこのような手は使わない。だが、今回は緊急事態である。正直な話、コーラルは自分とウィンクルムだけで、アリシアを説得できるとは思っていなかった。精々、彼女を落ち着かせることしかできないだろうと考えていたのだ。
アリシアは、特に家族に対してガードが固い。彼女にとって大切な人であればあるほど、アリシアは心を閉ざしてしまうだろう。それに友人や知り合いの人たちも、当然含まれる。だが、ただの知人程度では、余計にアリシアを傷つけてしまうかもしれない。
しかし、コーラルの中に不安はなかった。彼はおそらくプレシア並みにアリシアを愛しており、アリシアの魔力資質を知っている。それでいて、アリシアに顔を知られていない、他人に近い人間なのだ。彼女との接点は、誕生日に送られるカードとプレゼントだけなのだから。
『心配はいりませんよ。ちょっと頼りない人ですけどね。でも、今回のことを後で報告するよりも、巻き込んだ方が、きっといいはずです』
テスタロッサ家に関わることは、極力避けようとするヘタレ。おそらくアルヴィン以外には、顔を合わせることすら考えていなかっただろう。それでも全てが終わった後に聞かされるよりかは、彼なら話を聞けば、自分から行動に移すはずだ。
少しずつ距離が縮まっていく道。コーラルは、今日も仕事をしているであろうワーカーホリックに向けて、メッセージをとばした。
******
「……何やっているんだろ、俺」
右手に握る端末を眺めながら、アルヴィンは空を仰いだ。彼が今いるのは、先ほどまでいた病室ではなく、屋外。病院から離れ、目的地もなく、ただふらふらと見慣れた道を歩いていた。
今すぐに、自分がやらなければならないことなんて、わかっている。アリシアを追いかけて、ちゃんと話し合って、みんなで
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