第五十二話 思春期E
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は、自分がそこまで我慢強い人間だとは思えなかった。闇の書だって、今更投げ出せない。地上部隊との契約だってある。
「持っているやつと一緒にい続けるのって、やっぱりきついと思うんだ。特に俺はアリシアに一番近いと思うし、これからも傷つけてしまうかもしれない。だから、その、離れた方がいいのかな……って」
改めて言葉にすると、苦笑しか出てこない。彼なりに考え、まとめてみた内容。そんなアルヴィンの話に、……エイカは半眼だった。
「ぶっちゃけ、言っていいか」
「え、はい」
「お前ら兄妹、アホだろ」
「超ドストレートッ!」
まさかのバッサリに、さすがのアルヴィンも頬を盛大に引きづらせた。
「別に妹の悩みとか、てめぇの後悔をバカにするつもりはねぇよ。ただ、いつかバカなことをやらかすだろうな、とは思っていた」
「俺とアリシアが?」
「お前ら、ずっとへらへら笑っていただろ。楽しいときに笑うなら勝手にしろ、と思うが、楽しくない時も笑って、ため込んで、誤魔化していただろうが」
絶句するアルヴィンに、エイカはつまらなさそうに頬杖をつく。笑顔の裏を考えるようになったのは、アリシアが要因だ。彼女の笑顔は、アルヴィンに比べたら拙いところがあった。無理やり笑顔を作っていると、昔から人を観察していたエイカだから気づいた。
何故そのように笑うようになったのか。その原因を考えれば、自然と兄であるアルヴィンの真似をしているのかと思った。彼もずっと笑っていた。別に、それはかまわなかった。詮索するつもりはなかったし、笑顔で誤魔化すことが悪いことだとは思わない。穏便に生きるには、むしろ必要なスキルだろう。
それでも、どこかで発散しなければ、いつか爆発する。その爆発が、今回の兄妹喧嘩に発展してしまった。
「妹は、ため込み過ぎ。お前は気づいてやればよかったって言うが、てめぇらは兄妹だろうと、他人だろうが。何でもかんでも、お前がやらないと、あいつは何もできないのか。本当にてめぇは、あいつが何もできない無力なやつだと思っているのか」
アリシアには、相談できる相手がたくさんいた。彼女もまた、十分に恵まれている。魔法の力は持っていなかったのだとしても、彼女は他にもたくさんのものを持っていた。それに気づき、それを生かすかは、持っている本人次第。
「てめぇもてめぇで、何が俺がいたら傷つくだ。知るか、そんなもん。傷つくやつが勝手に傷ついているだけだ。持っているやつは、持っていないやつの顔色をいちいち窺わないといけないのかよ」
「それは、違うかもしれないけど…。でも、さすがにそれは」
「特にお前は、逃げているだけだろ。話し合うよりもまず、離れることを考えている時点で、あいつと向き合う気がない」
「―――ッ」
エイカが言う言
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