第五十二話 思春期E
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『アリシア様には、僕がついていきます。だから、いつでもご連絡をください』
アリシアが出て行った病室。それを追いかけようとするウィンクルムについて行くと宣言したコーラルは、アルヴィンに一度念話を送った。自分の主の様子がいつもと違うのは、わかっていた。妹が勝手に出て行ったというのに、彼はずっと俯いていたのだから。
だが、コーラルはそんな主と離れ、独自に動くことを決める。アルヴィンの傍にいたいという気持ちはあっても、いても何か力になれるかはわからない。それなら、デバイスである自身がアリシアを追いかけることで、状況を正確にテスタロッサ家に届けられる。アリシアの位置を伝えられる。何より、アルヴィンを安心させてあげられる。
アリシアのことは自分が見ているから大丈夫だと、だから自身のことに集中してほしい。落ち着いたら、こちらに知らせてくれればいいから。短い言葉に中に、込められた思い。冷静になったプレシアは、コーラルの意図に気づいたからこそ、その足を止めたのだから。
『……さて、どうしたものでしょうか』
走るウィンクルムと並行して飛翔する、緑の宝石。ミッドチルダの法律で、無許可の飛行は禁止されているが、デバイスにその規定はない。故にコーラルは、空中からアリシアを探索し、ウィンクルムに念話を送っていた。
飛行魔法もそうだが、クラナガンでの勝手な魔法の行使は管理局に止められている。正当防衛だったり、やむ得ない事情がある場合は、大目に見てくれることはあるが、見られたら確実に注意を受けるだろう。念話のような危険性のない魔法や、職務上必要な魔法ならば大丈夫だが、個人的な理由で使うのは注意の対象だ。そのためウィンクルムは、自身の足でアリシアを追いかけていた。
ウィンクルムの身体は、3歳の子どもと同じぐらいであるため、普通ならとても8歳の子どもの足に追いつけるはずがなかった。だが、彼女は人間ではなく、使い魔。そのスピードは魔法を使わずとも、確実にアリシアとの距離を縮めていた。
『ウィンクルム様、次の角を右に行ってください。そのまま進むと分かれ道がありますが、そこも右に進みます』
『うん。……でも、このあたりは初めて来たよ』
『大丈夫ですよ。ご心配には及びません』
不安そうな末っ子の声に、コーラルは安心するように声をかける。アルヴィンが地上部隊で働いている影響で、クラナガンの地図が記録されているからだ。コーラルがいる限り、迷子になることはない。いくら力や技術や思考能力があっても、ウィンクルムの精神は3歳の子どもなのだ。知らない場所というだけでも、気がかりを覚えるのは仕方がないことだろう。
アルヴィンに、プレシアに、アリシアに、ウィンクルム、と4人のフォローにコーラルは全力を出す。縁の下の力持ちという
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