第三章、その1の3:方々に咲く企み
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う?通して下さいな!晩餐会に遅れてしまいますわ!』
『御言葉ですが、キーラ様。我等衛兵は招待状の拝見無しには如何なるお人をお通しする権利は認められておりません。例え貴女がブランチャード男爵様の唯一の御息女であるとしても』
『し、招待状?私、そのようなものが要るとは聞いておりません・・・常はそうだったでしょう?』
『そうです、キーラ様。而して今宵は山賊討伐隊の無事なる帰還を、国王陛下自らが祝う神聖なる会に御座います。申し訳ありませぬが、陛下直々のお誘いを受けぬ者はお通しする事が・・・』
『・・・加えて申し訳ありませぬが、晩餐会は既に閉会しておりますゆえ、どうかお引取りを』
『・・・な、なんで・・・こんな・・・』
不条理な現実の流れに戸惑いを隠せなかった彼女は、徐々に諦めを認識していったのか、打ちひしがれた様子で呆然とする。そっと伸ばした手がゆっくりと戻され、拳を作りながらふるふると震えていた。
衛兵等は口を噤んでこの打ちひしがれた御令嬢をどうするべきか逡巡し始める。其処へ彼らを助けるかのようにコーデリアが声を掛けた。
「如何なされたのです、騒がしいですよ?」
「!コーデリア王女殿下!それに、異界の戦士殿!」
「敬礼は宜しい。職務を続けていなさい、厳粛に・・・キーラ、此方へ」
「しかし姫様!この方は晩餐会へ招かれておりませぬ故ーーー」
「中に入って私と話をするくらいなら大丈夫でしょう?さぁ、早く此方へ」
「は、はい・・・」
衛兵の間を重い足取りでキーラは歩き、俯きがちにコーデリアの方へ向かっていった。
「如何したのキーラ、こんな遅くに。まさか、晩餐会の時間を間違えて?」
「いいえ、そうではありません。・・・お恥ずかしながら、私、今宵の会に招待状が要るとは知らず・・・」
「それで何時もの時間に?」
こくりと頷く彼女の瞳には悲哀と悔しさが相混じった涙が浮かんでいた。衛兵の視線が無いと気付いたコーデリアはさっと彼女を抱き、その目端の涙を己のドレスに吸わせた。
「キーラ、国王陛下の気紛れは今に始まった事じゃないでしょう?哀しんでは駄目とは言わないけど、一つ一つを真剣に受け取りすぎては駄目。貴方の涙はあの方を想って流すには勿体無いものよ」
「・・・っ、コーデリア様・・・」
「さぁ涙を拭って、私の最愛の友人よ。今日は私と夜風の下に、美しく咲き誇る庭園の花々を愉しみましょう」
キーラは少し遅れて首肯し、その目に溜まった涙を静かに拭った。コーデリアは彼女を導くよう先へと進む。向かう先には所在なさげに佇んでいる慧卓が居り、彼はコーデリアに問う。
「コーデリア様、其方の方は?」
「ケイタク様、御紹介致します。此方、ブランチャード男爵の御息女、キーラ=ブランチャードです」
「男爵?っ
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