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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1の2:社交的舞踏会
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御座います』

 息を呑む声が多く聞こえる方に目を向ける。役者の中の主役、酒宴の中の主演が漸く現れたようだ。
 大扉よりゆっくりと、静かな美しさを湛えてコーデリアが姿を見せた。まるで薄氷の湖面を歩くタンチョウ鶴を思わせるが如き、優美で軽やかな白のドレスと変じて纏っている。頸元には樫の花をイメージして作られた黄色のアミュレットが煌き、薄らと乗せられた綺麗な化粧と併せて彼女の魅力を引き立てる。髪は小さなポニーで纏め上げられ、普段以上に項が見えているようだ。それが通な好みを持つ男達の視線を惹き付けているのは言うまでも無い。
 色目を送る老人達には目もくれず、コーデリアは真っ直ぐに玉座の国王を、そして慧卓を見据えた。静かな水面のような蒼の髪と琥珀色の瞳がドレスと神秘的な調和をし、遠目から見ても、決して色褪せる事の無い魅惑を放っていた。

「やっとか、コーデリア」
「・・・そうか。矢張りお前もまだまだ青臭い男子だな・・・正直、その愚直さが羨ましい」
「そうお思いでしたら、執政長官殿も、御一緒に馬鹿をやりませんか?」
「はは・・・もう私はそんな歳ではないさ。それに愉悦を感じるほど、心も若くない。・・・行って来い。餞別に、良い思い出にしてやろう」
「・・・はい。それでは閣下、失礼します」

 礼を一つして慧卓は真っ直ぐにコーデリアを出迎えに行く。レイモンドはそれを静かに見遣りながら、既に謀略の網を張り巡らせている貴族等の顔を思い浮かべていた。その網に掛かり茫然とする異界の獲物がナイフによって捌かれる光景もまた想像出来た。

(奴には悪いが確定事項なのでな。せめて今だけは歓待してやろう)

 レイモンドは思い一つを巡らせて、足音を立てぬ歩きでリュート弾きの下へと向かっていく。
 一方で慧卓は、先に会話をした三つの華もあっさりと無視をして、真っ直ぐにコーデリアの下へと辿り着いた。丁度広間の中央部分、衆目の中心の中で両者は足を止める。黒い正装と白きドレスは傍目から見れば、まるでタキシードとウェンディングドレスを来た初々しき婚約者達のような印象も持てなくはなかった。 

「ど、どうでしょうか...ケイタク様・・・その、『ウールムール』で買ったものを選んで来たのですけど・・・」
「・・・今まで一番綺麗な姿です・・・本当、天使みたいです」
「ぁぅ・・・あんまり、じっくり見ないで下さい。恥ずかしい、ですから・・・」

 眉を困らせながら頼み込む様は慧卓の心をぐらっと揺らすものがあった。場所が場所でなければ抱き締めていたかもしれない。或いは、接吻をせがんでいたか。
 そんな思いをさせぬのは、拍子の刻みが早くなり調子よくなってきたリュートの音色の為である。何時の間にか人々が広間の中央から壁際へと寄り、中央がぽかんと空く。其処へ群れるよう、男女
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