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美しき異形達
第六話 水と氷その八
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 菖蒲は二人の横に来た、それで言ったのだった。
「呼吸を合わせられるわね」
「はじめてだぜ、ちょっとな」
「まだそれはなのね」
「やってみないとわからないだろ」
 薊は自分の左横に来た菖蒲にこう返す、正面にいる怪人を見据えたまま。
「そういうのは」
「実践から言うのね」
「あたしは実際にやってみて確かめる主義だからさ」
 それでだというのだ。
「今はさ、まずはな」
「こうしてね」
「ああ、見させてもらうぜ」
 こう応えてだ、そのうえで。
 薊は身体を右に斜めにさせた構えですすす、と前に出た。菖蒲は左に斜めにさせている。そのうえで彼女も前に出た。
 二人同時に突きを出す、だが。
 蛇は姿を消した、そして。
 二人の後ろからあるもので攻撃してきた、それは。
 鞭だった、右手に蛇の身体そのままの鞭を持っていたのだ。それで。
 薊の首を掴んできた、それでだった。
 薊の首を締めてくる、鞭は強烈に彼女の首を絞める。だが。
 ここで菖蒲が動いた、右手に持っているその剣柄が十字になっている剣を上から一閃させた。そうしてその鞭を。 
 断ち切った、そうして言うのだった。
「危なかったわね」
「悪いな、助かったよ」
「動きは速いわね」
 薊の声を受けつつだ、菖蒲は怪人の方を見て告げた。
「思った以上に」
「蛇を侮らないことだ」
 これが怪人の菖蒲の言葉への返答だった。
「音もなく素早く動く」
「それが蛇ね」
「そうだ、だからな」
「今の様に動いたのね」
「その通りだ、しかし炎の女の首を締めようと思ったが」
「生憎だったわね」 
 菖蒲はクールな目で怪人を見つつ言葉を返した。
「私もいるのよ、今ハ」
「そうだな、しかし鞭は一つではない」
「一つでは?」
「そう、一つではないのだ」
 こう言ってだ、怪人は菖蒲に断ち切られた鞭を捨てるとだ、その右手に。
 また蛇の鞭を出してきた、しかもだった。
 その鞭は二つあった、右手に二つの鞭を出してきたのだ。長さは先程薊の首を絞めたそれよりも長かった。
 その二つの鞭を右手に同時に持った状態でだ、怪人は薊と菖蒲に言った。
「これで二人でも平気だと言った理由がわかったな」
「ああ、鞭を二つ操れるからか」
「だからなのね」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのだ。
「もっと言えばだ」
「!?」
 薊も菖蒲も見た、何とだ。 
 怪人は左手にも鞭を出してきた、それもこちらも二つだった。
 その合わせて四本の鞭を手にしたうえでだ、怪人は二人に言うのだった。
「さて、遠慮なくかかってくるがいい」
「鞭使いねえ、これはねえ」
「これは。何だ」
「ちょっと面白いね」
 不敵に笑っての言葉だった。
「これまでなかったからね」
「そう言う
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