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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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気は如何かな?」
「・・・相も変わらず、極上の美味で御座います、陛下」
「そうか。それならば良い。・・・して、隣の者は、これはまた若々しいではないか。初めまして、青年。私は国王、ニムル=サリヴァンだ」
「へっ、陛下!」
「良いではないか。私や貴族の家族以外では、久方ぶりの若者との対話だ。愉しませてくれ。青年、名乗り給え」

 底冷えするような思いをしながら慧卓は国王と瞳を合わせる。胸中ががくがくと痙攣するように震えるのを感じつつ、旅すがら必死に練習してきた凛々しき若い貴族の口調を貼り付けた。

「・・・拝謁の名誉を受け賜りし事、真に光栄であります、国王陛下。私めはケイタク=ミジョー、異界より参りました者に御座います」
「はは。堅苦しく言わんとも良いぞ。そち、歳は幾つだ?」
「・・・今年にて、十七を迎えます」
「そうか、それならば問題無いな。なに、そちは知らぬと思うが、此処では十七より飲酒や婚姻の許しが下されるのだ。これでそちも、晴れて宴に杯の華を咲かす事が出来ようぞ」
「そ、そうですか。それは有難い話です、ハハハハ・・・」

 声色に似合わず冗談も言えるようだ。乾いた笑みを浮かべながら緊張が俄かに解れる。

「して、アリッサが言うには機転と武勇が砦の陥落を助けたという。どちらが機転で、どちらが武勇かな?若いの、もしや君が武勇かな?」
「いえいえ、私の方が機転で御座います、陛下」

 だからこそであろう、安堵を覚えて口がやたらと饒舌となるのは。熊美の心配げな視線に気付かず慧卓は口走っていく。

「交戦時におきまして、私は山賊の砦の内にに積み込まれていた多量の手榴弾を、とある機会より敵方から奪いました。それを荷台に乗せ、炎を被せた後に門前へと叩き落したので御座います。結果、砦の門は爆砕し、その用を亡きものとしたのであります」
「すると、そちがブルームの仇かな?」
「え?」

 慧卓の表情が固まり、彼は視線を能面の王に向ける。王は淡々と続ける。

「ブルームの倅は、門が爆破された際に飛散した大きな木片に胴を射抜かれて、亡くなったと聞いておる。そうだったかな、ブルーム」
「・・・はっ、其の通りで御座います」

 硬い表情で頭を垂れるブルーム。慧卓はわなわなと湧き出た罪悪感と焦燥に苛まされるように慌てて謝罪しようとする。

「ぶ、ブルーム様っ。申し訳ーーー」
「謝るな」

 鋭き瞳に射抜かれて慧卓は舌を止める。ブルームは貴族等が横目を向ける中で語る。

「ケイタク殿。倅の死を貶めないでくれ。かの者は貴族の誇りを持って果敢に戦い、そして戦の倣いに従って戦地に倒れた。勇敢な最期を遂げたあ奴は、最期の最期まで己の生を、貴族の義務を全うした・・・私はそう信じておる。
 だからこそ、どうか戦の功労者であ
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