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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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う。遠征、ご苦労であった。今宵は祝勝会がある。英気を養うといい」
「はっ!」

 コーデリアに掛けなかった好意的な言葉に反し、ハボックはその情に浸かる事無くささと下がっていく。レイモンドはそれを気に留める事無く、遂に慧卓と熊美に目をつけた。 

「では、彼等の話を聞くとするかな」
「いくわよ」
「っ・・・」

 緊張した面持ちで慧卓が立ち上がる。途端に貴族等に加え、コーデリアやアリッサ等、室内の全員の視線の中心に置かれるような気がした。慧卓は震えを来さぬように引き締めた表情を作る。
 二人は二歩前へと進み、凛然とした態度で敬礼をした。

「御目に掛かる名誉を頂きまして、恐悦至極に御座います。異界より顕現致しました、クマミ=ヤガシラであります」
「・・・同じく顕現致しました、ケイタク=ミジョーです」

 二人の名乗りに、それまで静謐を保っていた宦官達がざわめく。慧卓の名にではなく、熊美の方にこそ注目が集まっているようだ。 

『クマミとな?矢張り本物の豪刃の羆か?』
『体躯を見れば分かるであろうが。我等の中で幾人は、三十年前に何度も彼を見た筈だぞ』
『だが余りに昔と違いすぎるぞ。一層と渋みを増しておる。あの時の面影など一つたりとも無いではないか!』
『人は直ぐに変わるぞ、法務の。貴様が一番理解していると思っていたのだがな』
「静まれ」

 漏らされた言葉に広間が凍てついた。短き言葉にそれ程の意味は無い。だがその抑揚が欠いた枯れ声を聞くだけで、並居る諸人は己の動きを止めるのだ。
 言葉を出した者、ニムル=サリヴァン、マイン王国国王の思いがけぬ行動にレイモンドが驚く。

「陛下・・・」
「レイモンドよ。私が聞いてみたい。良いかな?」
「・・・・・・はっ、承知致しました」

 逡巡の後レイモンドは首肯して閉口する。国王は悠然とした雰囲気を醸しながら、先ず熊美に目をつけた。

「そち、クマミ、といったな。初めに聞きたい。そちは本物の、『豪刃の羆』かな?」
「・・・はっ。私めは、三十年前に黒衛騎士団団長の地位を受け賜り、戦地を駆け巡っておりました」
「ふむ。・・・黒衛騎士団結成時の訓示を覚えているか?確かヨーゼフが言った筈なのだがな」
「『戦地に骸を晒すな。一族が囲む寝台にこそ屍を晒せ』。ヨーゼフ閣下は、このように私共に申されました」
「・・・はははは。皆の者、彼は本物だ。間違い無い」

 諸人を安心させるように言った心算であろうが、その声色は一分も身動ぎをしていない。もしやするとレイモンド以上に感情を顕さぬ声色であった。それでいて人を威圧して心を追い詰めるような感じがする。果たして本当にこの老人は宦官の操り人形なのだろうか。慧卓の心に疑念が思わず湧いてきた。

「よく還ってきたな。此処の空
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