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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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利な瞳と、白い総髪が似合う男である。隣に立つ、豚のような真ん丸とした瞳をした老人が呆れるように瞳を向けるが、男は我関せずとばかりに執政長官を睨むだけだ。

「しかしだ、コーデリア王女よ。それを聞く前に貴女に尋ねたい事が一つある。何故高貴な華であらせられる貴女が、血臭深き戦陣へと参られたのだ?」
「・・・これは、偏に私の浅はかなる思いによります」

 王女は後ろめたき口調でありつつも、長官から目を逸らさずに続ける。

「私は幼少の頃より、教会にて礼拝と修行を賜っておりました。深く壮麗な緑と主神の御教示に囲まれたその日々は、厳しくも温かみのあるものであり、それなくば今の私がある事は在り得ませんでした。宮殿に戻った後でも、辛き時はその修行の日々を思い出し、自らの心の支えとして参りました。正統なる王女と認められた後ではその日々を思い出す事は稀となり、唯一日一日、只管に王家の繁栄のためを思って過ごして参りました。もうあの日々を思い出す事は無いとばかりに、思っていました。
 ですが此度の乱におきましては違ったのです。討伐の対象となった件の山賊の砦は、私が幼き日々を過ごした教会に近く、戦端が開けばその余波で教会に危害が加わる惧れが御座いました・・・正確には、かの教会に置き去りとなったままの、私の懐かしき日々に。急に不安に駆られた私は誰にも知らせず、村へと派遣される兵隊等の馬車に潜り込んだのです。教会は無事でなくとも、せめて其処に置き去りとなった、思い出と思いの詰まった品々だけは取り戻そうとして・・・。これが事の、原因であります」

 コーデリアの長口上が終わる。誰も言葉を継がず、貴族の幾人は同情の瞳で、幾人は非難の瞳で彼女を見据えていた。そして最初に言葉を継いだ者は、後者に与する者であった。 

「・・・浅慮な。徒に臣民に動揺を与えたらどうするのだ?」
「これ、アストルヴォ。・・・どうかお許しを、王女様。こやつの五男坊が、その砦の攻略にて命を落されておりまして・・・」
「・・・殿下、御無礼をお許しくだされ」

 総髪の老人が頭を下げる。コーデリアは一瞬瞳を開くも、直ぐに冷静に言葉を返した。

「・・・許します。どうか頭を上げてくださいませ、ブルーム様。貴方の御子息は御立派に王国兵としての生を全うされたのですから」
「はっ」

 貴族ブルームは頭を上げた。慧卓はふと思い出す。  

(そういえば・・・解散式の時に呼ばれたっけな・・・ロバルト=フォン=ブルームだったっけ・・・爵位は何だ?)

 顔も見知らぬ若者は老人に似て、逞しくも凛々しき風貌を受け継いでいたのだろうか。
 執政長官はコーデリアに再び問う。 

「して、其の後は如何なされた?」
「現地に到着する前に、同討伐隊に参加していたアリッサに見付かりまして、自ら
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