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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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び、後は全て絢爛とした貴族の正装、威厳に満ち溢れたローブに身を包んでいた。
 
(鎧を纏い、玉座の近くで立てる人・・・詰まりあれは騎士の中で一番高位に座す人か。となると後は唯の貴族か文官、或いは、宦官か。そしてあれが・・・)

 玉座に座り込む老人。外見でみれば70代後半の弱弱しい老人である。老人は興味無さげに妖しき碧眼で以って見詰めてくる。老いを湛えた髪は短く刈り込んでおり、外観から伝わる気迫の無ささえ無ければ、それなりに活発そうな雰囲気が漂ってくるものである。この場の誰よりも絢爛として美しい刺繍が施されたローブを何の違和感無く着こなし、肘掛に肘をついて頭を支えている。実にふてぶてしくも、厳しさに似合った態度だ。 
 
「止まりなさい」

 貴族の列半ば辺りまで歩を進んだところで、コーデリアが四人にだけ聞こえるくらいの小声で言う。彼女以外の三者は立ち止まり、恭しく左膝を床に着けて頭を垂れた。コーデリアは彼等より一歩前に進み、ドレスの裾を広げて華麗な礼を披露する。だが王国随一の美少女に等しき彼女の魅惑に口端を歪める者は此処にはいないようだ。

「コーデリア=マインに御座います、国王陛下。ハボック=ドルイド隊長と共に参上仕りました」

 慧卓は興味を引かれて僅かに頭を上げて、後悔した。左の貴族の列、国王に最も近き場に立っていた、頭頂部に黒い火傷の痕が目立つ蛇面の老人と視線が合ったのだ。齢は見るからに60辺りであろうか。思うに、広間に入って視界に納めたときよりも更に瞳が細くなっている気がする。
 その老人はいたく無機質な声で、国王に対して悠然と話し掛けた。  

「・・・陛下、此処は私めに」
 
 老王は何もいわずに手を振った。許しを得たと解釈した老人は頭を下げ、国王を庇うように歩を進めて、無遠慮な冷徹さを抱いた瞳でコーデリアに向き直る。 

「コーデリア王女、ドルイド隊長。よくぞ御無事で帰参された」
「・・・レイモンド=フォン=モートン執政長官」

 両者の藍と琥珀の視線が絡み合い、虚空に剣呑な気を散らす。
 老人は無感動な口調で言う。

「城の貴族や兵達が口々に言っておるぞ。『蛮勇の鉄斧といえども、王国の武勇と威光の前に、屈服した』と。『山賊に物怖じせず最前線で指揮を執る王女の豪胆さをこそ倣うべし』と。『流石はヨーゼフ陛下の末娘なり』と」
「・・・御言葉ですが、執政長官殿。私はなにもしておりません。もしも讃えるのであれば、どうか私と共に最前線で奮起した兵達を真っ先に賞賛するべく、お願いしたく・・・」
「勿論だ。私も元はといえば最前線で賊を調伏させた者の一人。事の次第を是非にも聞いてみたい」

 老人の言葉に対し、鎧を纏った貴族の男が侮蔑の混じった色で小さく鼻を鳴らした。一昔前の時代劇の剣客に相応しき鋭
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