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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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るんじゃないか?)

 信じ難い世界である。 
 時が告げられたのは刻五つ目当たり、即ち午前十時頃であった。ハボックがそれを告げに来たのだ。討伐軍の将兵を代表した彼は常の重厚な鎧姿であり、貴族風の格好をした慧卓とは対照的な姿であった。
 四者は磨き抜かれた大理石の光沢を目に遣る事無くそれを踏みしめていき、宮殿の中央に設えられた王の間へと足を近づけた。繊細な金細工を施された大扉の前で二名、銀の鎧を纏った兵が油断無く儀礼用の剣を腰に挿して佇んでいた。

「コーデリア=マイン、マイン王国第三王女殿下。ハボック=ドルイド王国第三歩兵兵団大隊長殿。そして異界の方々、お待ちしておりました。陛下や、執政官殿らがお待ちです」
「承知しております。大扉を開けなさい」
「はっ」

 衛兵等は凛として扉の中へと向かって叫ぶ。 

『コーデリア=マイン、マイン王国第三王女殿下!!ハボック=ドルイド、王国第三歩兵団大隊長殿!!異界の戦士殿!!御参内!!!』

 言葉が途切れ、重厚な大扉がゆっくりと中へ開いていく。其処に広がる情景に、慧卓は言葉に言いえぬ感動の念を覚えた。
 其処は紛う事無き貴族の心を表した、大きな広間であった。顔の表情、皺一つ一つまで映えるやもと思わせる程の光沢を放つ大理石の床。羆の異名を持つ熊美ですら矮躯に見えるほどの高さを誇る天井は、気品の溢れる白を湛えており、これまた大理石であろう見事な造りである。金色に盛り上がった縁が美麗だ。シャンデリアこそ吊るしてはいないが、横合いに設置された大きな窓から差し込む光はまるで神の威光を纏っているかのようで、玉座に相応しき神々しさである。
 高さを誇る広間には二階部分も設置されているようだ。王の間左右の部分から、まるで体育館を思い出すように似た造りをした、通路が延びている。その部分に窓を背にする形で騎士が幾人か立ち、警護に当たっていた。無論その騎士等は王の間の方々に点在している。扉のすぐ近く、壁際、そして玉座の直ぐ脇にも。其処にアリッサが佇んでいるのも見受けられた。皆が皆光り輝く白金の鎧を纏い、怜悧な外観をした剣を帯に挿している。
 慧卓は今更ながら思う。

(王の間に入れるって事はそれ相応に凄い騎士・・・詰まりこの人達、近衛騎士だよな?)

 ふと二階通路部分に目を遣れば、王都に入った際に見かけた、赤いサイドポニーが印象的な美人騎士が佇んでいる。慧卓を見やってウィンクする姿は、その美貌に似合って中々様になっていた。  
 そして参内する者を歓迎するように正面一番奥、赤絨毯を敷いた階段を挟んだ先に、銀の縁取りが鮮やかな玉座が構えられている。其処までの道を開くように、十数人近くの年配の男達が左右に立ち並び、一様にして自然体に佇み、微動だにせず正面を見据えている。右方奥には鎧姿の男が二名並
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