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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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らぬかのように言葉を紡いだ。

「晩餐会では我等の他、貴族が大勢参上される。上は国王陛下から、下は男爵、そして上級騎士まで」
「上級騎士?」
「あぁ、いうなれば名誉身分の一つだな。貴族として家を興せるほどに功績を重ねつつも、貴族への昇格を拒む者達に付される特別な称号だ。下からの突き上げを回避するために作られた、新しい階級さ」

 小さく苦笑を漏らすアリッサを見て、もしや彼女がその上級騎士ではないかと慧卓は邪推する。アリッサは慧卓の視線に気付いて肩を竦めた。 

「一部の者を除いて、貴族は自らの権威の拡大を常に狙っている。気をつけくれよ、ケイタク殿。先ず彼らが狙うのは、若い貴方だ」
「な、何故に?」
「いったであろう、権威の拡大と。山賊団の撃滅に貢献した才気溢れる若人で、尚且つ異界の戦士。これに欲の手を伸ばさぬ者が何処にいようか」

 熊美に視線を交わすが、うんうんと思い出すかのように頸を振るだけ。どうやら本当のようだ。

「そっ、そうですか。色仕掛けとかなんでもありなんでしょうね・・・」
「それこそ序の口よ。本当に落す気なら、自分や親戚の娘の一人や二人、平然と貴方に嫁がせるわ」
「はひぃ!?」

 政略結婚いらっしゃーい、とふざけている場合ではない。自分が与り知らぬうちに事態は深刻化しているのだ。外堀からどんどんと埋められている気がしてならない。

「だけど余り心配をしなくてもいいんじゃない?誰かさんが、確りと守ってくれそうだからね?」
「と、当然です!!私が老獪な宦官共や抜け目の無い貴族達の魔の手から、必ずやケイタク殿をお守り致します!!騎士の誇りに誓って!!」

 俄かに期待を孕んだ顔付きでアリッサが誓う。にやりと笑みを浮かべる熊美に対して、慧卓は考えに耽るように顎に手を遣っていた。

「・・・ハーレムもいいかも」
『ふざけるんじゃない!!!!!』
「げっほぉぉっ!!!」
「・・・馬鹿な人」

 鉄拳二発を腹と顎に喰らって倒れこむ慧卓を見て、給仕として控えていたリタは呆れ気味に彼を見下ろしていた。 

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