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王道を走れば:幻想にて
第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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「ほう、大剣とな?そち、中々やるではないか。のう、アリッサよ」
「は、はっ!!伝説に偽り無き、見事な勝利で御座いました!!!」

 アリッサは緊張を湛えながらも、立派な姿勢で熊美を賞賛する。満更でもないのか、熊美も淡く笑みを零しているのが雰囲気で分かった。
 レイモンドが国王に時を告げる。

「陛下、そろそろ・・・」
「もう少し良いではないか」
「而して陛下。皆の政務が・・・」
「分かっておる。言ってみただけじゃ」

 国王が色の無い言葉でおどけるように言い、掌を軽く振った。その意外性のある所作に慧卓は思わず思う。もしかすると、自分はとんだ誤解を抱いていたのかもしれない。

(この人・・・声色が変わらないだけで、案外茶目っ気があるかも・・・)

 彼の思考を妨げるように、レイモンド執政長官は有無を言わせぬ圧迫を利かせて、慧卓達に、そして並居る貴族等に向かって言う。

「残念だがそろそろ拝謁は終わりだ。間も無く我等は政務に戻らねばならん。午後もまた同様。ついては諸君、まだまだ話し足らぬと思うのであれば、夕刻に開かれる晩餐会にてお願い申し上げたい。宜しいかな?」
『はっ!』
「宜しい。晩餐会では、彼らの祝勝会の意味を兼ねている。くれぐれも、粗相が無いように・・・近衛兵!」

 大扉近くの近衛騎士が背筋を正した。

「彼らが御退出される」
『はっ!!!コーデリア=マイン、マイン王国第三王女殿下!!バッカス=ドルイド、王国第三歩兵団大隊長殿!!異界の戦士殿!!御退出!!!』
「戻るわよ」

 熊美に促されるままに慧卓は国王に向かって再度深き礼をした後、後ろを振り返って退出していく。貴族等の視線は相も変わらず睥睨するような、或いは独特の圧迫感のあるもの。一方で一部からの視線には温かみのあるものを感じつつ、慧卓等は王の間を後にした。

「では、皆も政務に戻ってくれ。御苦労であった」

 残された者達も慧卓の後を追うように順々と退出していく。残されたのは直近の近衛騎士数名、レイモンド執政長官、そしてサリヴァン国王のみである。

(ふむ。実直そうな若人だったな。今のところはそれだけだが)
「ふふふふ・・・」
「陛下?」

 レイモンドが思いを馳せていると、国王がくつくつと笑みを零すのに気がつく。先には見られぬ、愉快げな色が混じった笑みであった。

「まだまだ、面白い事に尽きぬな。この『セラム』は。のう、レイモンド」
「・・・は、はっ。御言葉の通りに御座います・・・」

 他人事のように呟く国王の横顔が、いたく不気味で、それがゆえに底無しの泥濘のように恐ろしく見える。レイモンドは胃の内に寒さを覚えながら返答を返した。




「・・・ふぅ。本当に疲れたわ・・・」

 拝謁が終わる
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