第三章、その1:冷え込んだ拝謁
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・ん?どうしました、アリッサさ・・・あ」
今更ながら漸く陽射の眩さに意識を取り戻した慧卓は彼女の視点を追うように目を遣り、しまったといわんばかりに呆けた。侍従の方が用意してくれた薄手の寝巻きの下より、身体の血流に従うように隆起した一物の姿を認めたのだ。
(あー、なんか前にも同じ展開があったような)
「・・・あ、朝からなんでそんなに元気なのよおおお!!!」
「そうそう、こんな風に殴られってえええええ!?」
顎に走る衝撃も、其処から伝わる拳の硬さも感触も全く同じ。そして慧卓は不可抗力の波に攫われ、再び意識を落したのであった。
「さ、さっきはすまない!ついカッとなってしまったんだ!あ、あんなの見せるから・・・」
「いえいえ、此方こそすみません・・・なんか、欲求不満みたいなモノを見せてしまって。結構良い思いをしている癖にこいつは欲張りなもので」
「いやいや此方の方が悪いんだ!殴るのは流石に拙かった!」
「いいや俺が悪かったんです!!」
「いや私こそっ!!!」「俺がです!」「私が!!」「俺が!!!」「私が!!!!!!」
「いい加減にしなさいよ、貴方達!!!!」
熱帯びた謝罪合戦に水を差すように、『バンッ』と、膝を力強く叩く音がして二人は頸を竦める。そろそろと目を遣る先には、呆れと苛立ちを同居させた表情を浮かべた熊美が椅子に座っていた。
「何が俺が私がよ!謙遜の文化も大概にしないと厭味になるわよ!!少しは自制しなさい!!」
「す、すみません・・・」「申し訳ありません・・・」
萎縮して謝る二人に溜息を零した後、熊美は上座に腰を落ち着けているコーデリア王女へ向き直り、頭を下げた。
「朝早くから騒ぎ立てて、申し訳ありません、王女様」
「申し訳御座いません、王女殿下」
「いえいえ、お気になさらず。今日も元気な姿が見られて、私、安心致しましたわ」
朝から心洗われる可憐な笑みを零すコーデリアに、一先ずの安心を慧卓は抱いた。
二度目の起床につきはっきりとした意識を持った慧卓は侍女等に引き摺られるまま、朝食が用意された一室へと招かれていた。テーブルの上には銀の皿が幾つも置かれ、それぞれに朝食が置かれている。コッペパンのような厚めのパンに苺のジャム、玉葱のブイヨン、付け合せに一口サイズのチーズが少々と果実を含んだヨーグルト。
「ケイタク殿やクマミ殿の御口に合うよう、村で出されたものに似たものを御用意させて頂きました」
「御心遣い、痛み入ります」
「有難う御座います、王女様」
朝から血圧を高めるようなものは無理である。コーデリアの気遣いがとても有り難かった。
慧卓は熊美と視線を交わし、同じタイミングで掌を合わせた。
『いただきます』
「はい、召し上がれ」
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