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王道を走れば:幻想にて
第二章、終幕:初旅の終わり ※エロ注意
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あぅ・・・」

 小さく悲鳴を漏らす王女に慧卓は問う。

「あの、殿下。其方の御方は?」
「あっ。ご、御紹介致します。此方は普段から私の世話をしてくれている、クィニです」
「遥遥異界からよく御越し下さいました。コーデリア=マイン第三王女殿下に付き従っております、クィニと申します。宮廷におきましては、侍従長としても通っております。どうぞ宜しく御願い致します」

 澱みの無い綺麗な礼に対して慧卓らもまた一礼を返す。クィニは手を施設の奥の方へと翳して言う。

「話は窺っております、クマミ様、ケイタク様。どうぞ此方へ。遠路の疲れを癒すために湯浴みを御用意させて戴いております」
「おぉ、忝(かたじけな)い。御厚意に感謝致す。・・・それでは王女様、アリッサ殿。私共はこれにて」
「此処まで、お世話になりました」
「ふふ。また明日も、元気な姿を見せて下さいね。それでは、失礼致します」

 鎧姿でありながら優雅な礼をしたコーデリアはアリッサの方へと足を向ける。彼女は軽く目礼をした後、コーデリアの斜め後ろに控えるように身を置いて、白く輝く宮殿の方へと去っていった。

「此方へ。御案内させて戴きます」

 クィニがそっと手を向ける方は宮殿の方角より僅かにずれた南東部へと向かっている。彼女の後背につくように異界の二人は歩いていく。
 だいぶ傾いてきた西日に当たって俄かに茜色を帯びてきた城壁では、鎧に夕焼けの赤を照らした兵達が哨戒をして警備に当たっている。軍施設が集中するという王都北部であるためか、その数は他の区域に比較すると多い方なのだろう。城壁も然る事ながら、街中もまた警備隊とよく擦違うものであった。

(うっは。高そうな鎧だな。あれ何製だ?)

 擦違った警備隊長が召した、白金の鎧に目を奪われ、その背に靡く純白のマントにもまた目を向ける。樫の花が見事に咲かれた一品であり、手触りのよさそうなマントであった。
 歩き始めて一分も経たたぬ内に、周囲の風景が変わり始める。無個性かつぶっきらぼうゆえに堅牢なイメージが付き纏っていた軍施設が姿を変えて、門付の見事な邸宅が並び立つようになって来た。差し詰め高位に座す軍人の邸宅か。庭中で番犬が欠伸をしているのが微笑ましい。
 邸宅の林を過ぎ去ると、クィニは左手の方へ折れて歩いていく。宮殿へと続く裏口であろう。長屋のような家屋が入ってすぐの場所に置かれている。

「此処は宮殿の裏門に御座います。王家に仕える従者や使用人は此方の長屋にて生活をし、宮殿の方へ通うのです」

 クィニの言葉を聞きつつ、三者の足はひんやりとした宮殿の石畳を踏みしめていく。唐紅の光が西から注ぎ、地表に赤と黒の光陰を描いている。三者が歩いているのは一つの回廊である。何も無い中庭を囲むように庇を被った石柱が立ち並んでい
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